中学生が古文を苦手なのは、学校では1年に1回習うだけで、古文を読む機会が少ないからです(英語の長文も、読み慣れていないので子どもたちは皆嫌いです)。
折にふれ古文を読み、慣れ親しんでおけば、入試に出たときも楽な気分で取組むことができます。
というわけで、今日は『気楽に古文を読もう』シリーズの第1弾。
題材は、平成21年度大阪府公立高校の前期入試問題を使います。「気楽に古文を読む」のが目的ですから、入試問題と思わないで気楽に眺めてください。
高校入試では、たいして難しい古文は出題されません。古語で書かれているだけで出題内容も現代文と似通っており、現代文の問題を解くのと同じ要領で解くことができます。
古文を読むときの留意点
(1)読めても読めなくても、意味がわかってもわからなくても、声を出して読むこと。古文は、音読をすると「何が書いてあるか」すうっと頭に入ってくることが多い。一度目は、たどたどしくてよいので、とにかく声を出して最後まで読む。二度、三度と声を出して読むうちに、少しずつ内容がわかってくる。
(2)古文の書かれた時代の人も異星人ではない。現代の私たちと同じことを喜び、同じことに苦しむ、同じ人間である。同じ日本語で書かれているのだから、私たちの常識に従って読めば絶対に意味はわかるはずだと思って読み進めること。
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
( )内の平仮名は問題につけてあった読み仮名です。
また、下線を引いた語は、問題文に最初からついている注釈をあとにのせておいたので、注を参考にしながら読み進んでください。
一年(ひととせ)夏の頃(ころ)、江戸より来(きた)りたる行脚(あんぎゃ)の俳人を停(とどめ)おきしに、いふやう、此(この)国の所々にいたり見るに富家(ふか)の庭には手をつくしたるもあれど、垣はいづれも粗略にてかりそめに作りたるやうなり、いかなるゆゑにやといふ。
答(こたへ)ていふ、いぶかり給(たま)ふもことはりなり、かりそめに作りおくは雪のゆゑなり。いかんとなればいかほどつよく作るとも一丈のうへこす雪におし崩(くづさ)るるゆゑ、かろくつくりおきて雪のはじめには此垣をとりのくるなりと語りし事ありき。
(注)
一年(ひととせ)・・・ある年、行脚・・・徒歩で諸国を旅すること、停(とどめ)おきしに・・・泊めたときに、いふやう・・・言うことには、此国・・・ここでは越後の国(現在の新潟県)のこと、かりそめに・・・一時的に、いぶかり給(たま)ふ・・・疑問に思われる、いかんとなれば・・・なぜかと言うと、一丈・・・約三メートル、とりのくるなり・・・取り除くのだ
『北越雪譜』(岡田武松校訂)岩波書店による
簡単な解説
(注)を参考にしたら内容は難しくないと思います。
簡単な現代語訳(少なくとも3回音読したあと、見てください。)
ある年の夏、江戸から旅をしてきた俳人を家に泊めたとき、「ここ越後の国のあちこちを見て歩いたとき、資産家の家の庭には手をつくした立派な庭もあるのに、垣根はどの家のものも粗末なつくりで一時的に作ったようなものばかりだがなぜなのですか。」と言われた。
「疑問に思われるのももっともです。垣根を一時的なつくりにしているのは雪が理由です。なぜかというと、垣根を強くつくっても3m以上の雪に押しつぶされてしまうので、簡便につくっておいて雪が降り始めると垣根を取り除くのです」と答えたことがありました。
どこが会話部分かを正確に把握しておこう
会話部分を見つけるキーワードを知っておけば、会話部分は簡単にわかります。
いふやう「・・・・・・・・」と
いふ「・・・・・・・・」と
のように、『いふやう』と『と』にはさまれた部分が会話にあたります。
せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう。
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
一年(ひととせ)夏の頃(ころ)、江戸より来(きた)りたる行脚(あんぎゃ)の俳人を停(とどめ)おきしに、いふやう、此(この)国の所々にいたり見る(A)に富家(ふか)の庭には手をつくしたるもあれど、垣はいづれも粗略にてかりそめに作りたるやうなり、いかなるゆゑにやといふ(B)。
答(こたへ)ていふ、いぶかり給(たま)ふもことはりなり、かりそめに作りおくは雪のゆゑなり。いかんとなればいかほどつよく作るとも一丈のうへこす雪におし崩(くづさ)るるゆゑ、かろくつくりおきて雪のはじめには此垣をとりのくるなりと語りし(C)事ありき。
(注)
一年(ひととせ)・・・ある年、行脚・・・徒歩で諸国を旅すること、停(とどめ)おきしに・・・泊めたときに、いふやう・・・言うことには、此国・・・ここでは越後の国(現在の新潟県)のこと、かりそめに・・・一時的に、いぶかり給(たま)ふ・・・疑問に思われる、いかんとなれば・・・なぜかと言うと、一丈・・・約三メートル、とりのくるなり・・・取り除くのだ
1、粗略にてとあるが、これと対照的な様子を表していることばを、本文中から七字で抜き出しなさい。
(講師から一言:「粗略に」の反対の意味を表わす語を本文から探せばよい。「七字で」が、よいヒントになる。)
2、ことはりなりの意味として次のうち最も適しているものを一つ選び、記号を書きなさい。
(講師から一言:中学生に古文の語彙や古典の知識を問う問題はほとんど出ない。ここでも、「ことわり」の意味を知っているかどうかを尋ねているのではない。本文の前後から推測して、一番あてはまりそうなものを選択肢から選べばよい。)
ア もっともなことだ イ おかしなことだ
ウ めずらしいことだ エ はずかしいことだ
3、本文中のA~Cのをつけた語のうち、その動作を行っている人物の異なるものが一つだけある。その記号を書きなさい。
4、本文中では、この国では垣根は取り除くことができるように一時的に作るということが述べられている。そのようにする理由は、本文ではどのように述べられているか。現代のことばで、二十五字以内で書きなさい。
(講師から一言:問いに該当する部分を本文から探して、(英語を日本語に訳すときのように)一語一語をおろそかにしないで、現代語に訳していきます。)
解答
1 手をつくしたる
2 ア
3 C
4 どんなに強く作っても雪で押しつぶされるから。
国語の全目次はこちら
国語 分野別学習目次
折にふれ古文を読み、慣れ親しんでおけば、入試に出たときも楽な気分で取組むことができます。
というわけで、今日は『気楽に古文を読もう』シリーズの第1弾。
題材は、平成21年度大阪府公立高校の前期入試問題を使います。「気楽に古文を読む」のが目的ですから、入試問題と思わないで気楽に眺めてください。
高校入試では、たいして難しい古文は出題されません。古語で書かれているだけで出題内容も現代文と似通っており、現代文の問題を解くのと同じ要領で解くことができます。
古文を読むときの留意点
(1)読めても読めなくても、意味がわかってもわからなくても、声を出して読むこと。古文は、音読をすると「何が書いてあるか」すうっと頭に入ってくることが多い。一度目は、たどたどしくてよいので、とにかく声を出して最後まで読む。二度、三度と声を出して読むうちに、少しずつ内容がわかってくる。
(2)古文の書かれた時代の人も異星人ではない。現代の私たちと同じことを喜び、同じことに苦しむ、同じ人間である。同じ日本語で書かれているのだから、私たちの常識に従って読めば絶対に意味はわかるはずだと思って読み進めること。
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
( )内の平仮名は問題につけてあった読み仮名です。
また、下線を引いた語は、問題文に最初からついている注釈をあとにのせておいたので、注を参考にしながら読み進んでください。
一年(ひととせ)夏の頃(ころ)、江戸より来(きた)りたる行脚(あんぎゃ)の俳人を停(とどめ)おきしに、いふやう、此(この)国の所々にいたり見るに富家(ふか)の庭には手をつくしたるもあれど、垣はいづれも粗略にてかりそめに作りたるやうなり、いかなるゆゑにやといふ。
答(こたへ)ていふ、いぶかり給(たま)ふもことはりなり、かりそめに作りおくは雪のゆゑなり。いかんとなればいかほどつよく作るとも一丈のうへこす雪におし崩(くづさ)るるゆゑ、かろくつくりおきて雪のはじめには此垣をとりのくるなりと語りし事ありき。
(注)
一年(ひととせ)・・・ある年、行脚・・・徒歩で諸国を旅すること、停(とどめ)おきしに・・・泊めたときに、いふやう・・・言うことには、此国・・・ここでは越後の国(現在の新潟県)のこと、かりそめに・・・一時的に、いぶかり給(たま)ふ・・・疑問に思われる、いかんとなれば・・・なぜかと言うと、一丈・・・約三メートル、とりのくるなり・・・取り除くのだ
『北越雪譜』(岡田武松校訂)岩波書店による
簡単な解説
(注)を参考にしたら内容は難しくないと思います。
簡単な現代語訳(少なくとも3回音読したあと、見てください。)
ある年の夏、江戸から旅をしてきた俳人を家に泊めたとき、「ここ越後の国のあちこちを見て歩いたとき、資産家の家の庭には手をつくした立派な庭もあるのに、垣根はどの家のものも粗末なつくりで一時的に作ったようなものばかりだがなぜなのですか。」と言われた。
「疑問に思われるのももっともです。垣根を一時的なつくりにしているのは雪が理由です。なぜかというと、垣根を強くつくっても3m以上の雪に押しつぶされてしまうので、簡便につくっておいて雪が降り始めると垣根を取り除くのです」と答えたことがありました。
どこが会話部分かを正確に把握しておこう
会話部分を見つけるキーワードを知っておけば、会話部分は簡単にわかります。
いふやう「・・・・・・・・」と
いふ「・・・・・・・・」と
のように、『いふやう』と『と』にはさまれた部分が会話にあたります。
せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう。
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
一年(ひととせ)夏の頃(ころ)、江戸より来(きた)りたる行脚(あんぎゃ)の俳人を停(とどめ)おきしに、いふやう、此(この)国の所々にいたり見る(A)に富家(ふか)の庭には手をつくしたるもあれど、垣はいづれも粗略にてかりそめに作りたるやうなり、いかなるゆゑにやといふ(B)。
答(こたへ)ていふ、いぶかり給(たま)ふもことはりなり、かりそめに作りおくは雪のゆゑなり。いかんとなればいかほどつよく作るとも一丈のうへこす雪におし崩(くづさ)るるゆゑ、かろくつくりおきて雪のはじめには此垣をとりのくるなりと語りし(C)事ありき。
(注)
一年(ひととせ)・・・ある年、行脚・・・徒歩で諸国を旅すること、停(とどめ)おきしに・・・泊めたときに、いふやう・・・言うことには、此国・・・ここでは越後の国(現在の新潟県)のこと、かりそめに・・・一時的に、いぶかり給(たま)ふ・・・疑問に思われる、いかんとなれば・・・なぜかと言うと、一丈・・・約三メートル、とりのくるなり・・・取り除くのだ
1、粗略にてとあるが、これと対照的な様子を表していることばを、本文中から七字で抜き出しなさい。
(講師から一言:「粗略に」の反対の意味を表わす語を本文から探せばよい。「七字で」が、よいヒントになる。)
2、ことはりなりの意味として次のうち最も適しているものを一つ選び、記号を書きなさい。
(講師から一言:中学生に古文の語彙や古典の知識を問う問題はほとんど出ない。ここでも、「ことわり」の意味を知っているかどうかを尋ねているのではない。本文の前後から推測して、一番あてはまりそうなものを選択肢から選べばよい。)
ア もっともなことだ イ おかしなことだ
ウ めずらしいことだ エ はずかしいことだ
3、本文中のA~Cのをつけた語のうち、その動作を行っている人物の異なるものが一つだけある。その記号を書きなさい。
4、本文中では、この国では垣根は取り除くことができるように一時的に作るということが述べられている。そのようにする理由は、本文ではどのように述べられているか。現代のことばで、二十五字以内で書きなさい。
(講師から一言:問いに該当する部分を本文から探して、(英語を日本語に訳すときのように)一語一語をおろそかにしないで、現代語に訳していきます。)
解答
1 手をつくしたる
2 ア
3 C
4 どんなに強く作っても雪で押しつぶされるから。
国語の全目次はこちら
国語 分野別学習目次
コメント