国と地方公共団体の関係の転換

日本国憲法第94条
「地方公共団体は、その財産管理し、事務処理し、及び行政執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」

日本国憲法の条文にそって地方自治の仕組みが整えられたのですが、1990年代後半から、国の財政難もあって、国から地方に権限を移そうという動きが起こります。これが「地方分権」です。

1999年に成立した地方分権一括法により、それまでの、国が地方公共団体に指示・監督する上下の関係から、国と地方公共団体が平等にそれぞれの役割を分担する対等な関係への転換が図られました。

地方自治法も、1999年に、「機関委任事務」の廃止など、地方分権の理念の下に大きく改正されました。


地方公共団体の仕事

以前は、地方公共団体は国の委託を受けて国の仕事の一部を数多くおこなっていました(これを機関委任事務といいました)。

地方分権一括法以降、機関委任事務は廃止され、かわりに、地方公共団体の仕事は法定受託事務自治事務の2つに整理されました。

法定受託事務・・・戸籍や外国人登録、国会議員選挙の管理、失業対策事業などに関する仕事。
本来は国の事務ですが、住民の便宜のために地方公共団体の窓口が業務の一部をおこないます。

自治事務・・・地方公共団体がおこなう、法定受託事務以外の一切の仕事を自治事務といいます。
(1)教育・文化に関するもの
公立学校の運営、図書館・公民館・体育館の運営。
(2)社会福祉に関するもの
住宅の供給、保育所の運営、公営老人ホームの運営。
(3)保健衛生に関するもの
病院の運営、保健所の活動。
(4)公営事業
バス、地下鉄、水道・下水道の経営。
(5)公共事業
道路・橋の建設、河川の改修。
(6)防犯と安全に関するもの
警察の仕事、消防の仕事。


地方公共団体の財政

地方公共団体の事務の費用をまかなうための財源として2つのものがあります。

(1)自主財源・・・地方公共団体の収入であり、自由に使える財源。
住民税(都道府県民税、市町村民税)や固定資産税などの地方税による収入がほとんどですが、施設の使用料、寄付金、繰入金などが含まれます。

(2)国からの援助・・・地方税による収入だけでは地方公共団体の必要な金額に足りないので、国から援助を受けています。
おもなものは、地方交付税交付金国庫支出金の2つです。

地方交付税交付金

地方公共団体の財源の不足を補い、地方公共団体間の格差を是正するために国から配分される交付金です。
国庫支出金とちがって、使い道は限定されません。

国税(所得税、法人税、酒税、消費税、たばこ税の5つに限定)の一部を地方公共団体の実情に応じて再分配します(例えば、東京都は大企業が集中し税収が多いので地方交付税交付金の交付は受けていません(不交付団体))。

国庫支出金

国が使い道を限定して地方公共団体に交付する支出金を国庫支出金といいます。

国庫負担金(国が共同責任をもつ事務の経費を国が負担します)、国庫補助金(特定の政策のために国が財政援助をします)、国庫委託金(本来国がおこなう事務を処理する費用を国が負担します)の3つに分かれます。

国庫支出金の用途は国から厳しく制限され、地方公共団体は他の仕事のために使うことはできません。
また、年度内に使わなかった金額は国に返還しないといけません。


3割自治・4割自治と三位一体(さんみいったい)の地方財政改革

長い間、地方公共団体は必要とする経費の3分の1程度しか自主財源でまかなえない状況が続いていました。
必要な財源の3割~4割しか自主財源がないので、3割自治、4割自治といわれてきました。

地方分権一括法の施行以後、「三位一体改革」と呼ばれる地方財政の改革がおこなわれ、現在では、地方財政の歳入総額のうち、地方税収入が43%、地方交付税交付金が17%、国庫支出金が13%の割合となっています(約10兆円の不足分が地方債の発行で補われています)(平成20年)。

三位一体の改革

2001年に発足した小泉内閣以降、地方の自主財源を増やすためにおこなわれた改革で、次の3つを柱としました。

(1)国庫支出金などの補助金を削減する。
(2)地方交付税を見直して削減する。
(3)国のもっていた税源を地方公共団体へ移譲する(国税の割合を減らし、地方税の割合を増やす)。

2004年には、国庫支出金が1兆300億円、地方交付税が2兆9000億円削減され、6600億円が税源移譲されました。

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