ほとんどの教科書に、「寒冷前線が通過すると北よりの風に変わり、気温が急に下がる」、「温暖前線が通過すると南よりの風に変わり、気温は上がる」と書いてあります。

寒気団が通過するときにできるのが寒冷前線であり、寒冷前線が通過すると気温が下がる(温暖前線の場合は逆になる)のは納得できます。

なぜ、風向きも変わるのでしょうか?


(予備知識その1)低気圧の性質

寒冷前線、温暖前線がそれだけでやってくることはまれです。
多くの場合、寒冷前線、温暖前線は低気圧にともなわれてやってきます。
低気圧低気圧は、必ず右斜め下に温暖前線、左斜め下に寒冷前線をともなって移動してきます。

(温暖前線の速さは遅く、寒冷前線の速さは速いので、寒冷前線は徐々に温暖前線に近づき、やがて追いついて閉塞前線となりますが、ここではそのことは重要ではありません。)








(予備知識その2)低気圧と風向

低気圧では上昇気流が発生し、北半球では、低気圧の中心に向かって低気圧2反時計回り風がふきこみます

(逆に高気圧は下降気流が発生し、北半球では、高気圧の中心から時計回りに風がふき出しています。)











(予備知識その3)低気圧の移動する方向

北半球の中緯度にある日本付近では、低気圧は西から東のほうへ移動低気圧3します。

(だから、低気圧が近づくと西のほうから天気は悪くなってきます。)










以上の3つの予備知識をふまえてはじめて、「寒冷前線が通過すると北よりの風に変わり」、「温暖前線が通過すると南よりの風に変わる」わけがわかります。

前線の通過で風向きが変わる理由

今、3つの場所P、Q、Rが下の図の位置にあるとします。

(1)低気圧から南東に温暖前線が、南西に寒冷前線がのびています。
(2)風は低気圧の中心に向かって反時計回りにふきこんでいます。
(3)低気圧は前線をともなって西から東に移動しています。

低気圧4
P地点は温暖前線が通過する直前です。風は南東の風がふいています。

Q地点は温暖前線が通過した後、寒冷前線が通過する前です。風は南からふいています。

R地点は寒冷前線が通過した後です。風は北西からふいています。

この図だけでも、「温暖前線が通過すると南よりの風に変わり」「寒冷前線が通過すると北よりの風に変わる」ことを理解できますが、わかりやすいように低気圧をさらに移動させてみましょう。

低気圧5
低気圧の移動前は南東の風がふいていたP地点ですが、温暖前線が通過した後の風向は南よりに変わっています。

また、低気圧の移動前、南から風がふいていたQ地点は、寒冷前線が通過した後、風向は北よりに変わっています。





以上の説明で、なぜ「寒冷前線が通過すると北よりの風に変わり」、「温暖前線が通過すると南よりの風に変わる」のか、その理由がわかってもらえたと思います。



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