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カテゴリ:【教科別学習】 > 国語

強調したり、感動を高めたり、余韻を残したり、調子をととのえたりするために、特別にもちいられる文章表現の技(わざ)・工夫のことを表現技法といいます(修辞法ともいいます)。

おもな表現技法には次のものがあります。


1、倒置法(とうちほう)
定義 通常の言い方とは言葉の順序にする
例文 「もうやめろ、そんな幼稚なことは。」(「そんな幼稚なことはもうやめろ。」が通常の語順)
効果 強調する

2、比喩(ひゆ)(他のものにたとえる表現。直喩・隠喩・擬人法に分かれる。)
(1)直喩(ちょくゆ)(明諭:めいゆ)
定義~のように」などを使い、たとえであることを明示した比喩
例文 「人生は羅針盤のない旅のようなものだ。」
効果 印象を強める

(2)隠喩(いんゆ)(暗喩:あんゆ)
定義 「~のような」などの、たとえを明示する語を使わない比喩
例文 「人生は羅針盤のない旅だ。」
効果 印象を強める

(3)擬人法(ぎじんほう)(活諭:かつゆ)
定義 人間ではないものの様子を人間の動作のように表現する
例文 「ひまわりは太陽に恋をしている。」
効果 印象を強める

3、対句法(ついくほう)
定義 対照的な二つの言葉を同じ形で並べる
例文 「春、君に出会い、秋、君と別れる。」
効果 調子をととのえ、印象を強める

4、体言止め(たいげんどめ)
定義 文の終わりを体言(=名詞)で止める
例文 「見上げると満天の星。」
効果 余韻(よいん)を残す。

5、反復法(はんぷくほう)
定義 同じ語をくり返す
例文 「もう一度会いたい。もう一度会いたい。」
効果 調子をととのえ、感動を強める

6、省略法(しょうりゃくほう)
定義 言葉を省く
例文 「坂を越えたら、また坂が・・・。」
効果 余韻を残す

7、呼びかけ(よびかけ)
定義 人などに具体的に呼びかける
例文 「おおい、雲よ。」
効果 強く訴える

8、押韻(おういん)
定義 文の初め(頭韻)や文の終わり(脚韻)に同じおん)を並べる
例文 「今日(キョウ)は興奮(フン)、妙(ミョウ)な気分(ブン)。」
効果 調子をととのえる



注1:各表現技法の内容を覚えやすいように、できるだけ短い説明にしました。

注2:国語科では、表現技法を詩や短歌・俳句の単元で習うことが多いのですが、使われる場面は詩・短歌・俳句に限りません。

注3:「余韻を残す」とは、文を読んだあとも、読んだときの感動があとに尾を引いて残ることを言います。



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文学史です。
公立高校入試だと出ても1問ですが、私立高校、特に女子の学校でよく出題されます。
また、社会科との関係も深く、国語と社会科の両方で同じことが問われたりします。
さらに、受験勉強の見地を離れても、古典は一生の友、いつかは目を通してほしい作品が目白押しです。一般常識としても知っておくべき知識だと思ってください。

奈良時代~室町時代作品名・分野(ジャンル)・作者(編者)名の順。
青字はよく出題される付随情報や作品の冒頭・書出しの部分です。

奈良時代

古事記(神話) 太安万侶
日本書紀(歴史書) 舎人親王
万葉集(歌集)大伴家持 最古の歌集、柿本人麻呂 山上憶良、額田王など

平安時代

竹取物語(物語) かぐや姫の物語
伊勢物語(歌物語) 在原業平がモデル
古今和歌集(歌集)紀貫之 最初の勅撰和歌集、小野小町、在原業平など
土佐日記(日記)紀貴之 男もすなる日記といふものを女もしてみむとて…
枕草子(随筆)清少納言 春はあけぼの…
源氏物語(物語)紫式部 いづれの御時にか女御更衣あまたさぶらひ給ひける…
今昔物語集(説話) 今は昔…で始まる、芥川龍之介が多く作品の題材とした
山家集(歌集) 西行法師

鎌倉・室町時代

新古今和歌集(歌集)藤原定家 三大和歌集の一つ、七五調
金槐和歌集(歌集)源実朝
方丈記(随筆) 鴨長明 行く川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず…
徒然草(随筆) 吉田兼好 つれづれなるままに日ぐらし硯にむかひて…
宇治拾遺物語(説話) 「こぶとり」、「舌切り雀」などの話が出てくる
十訓抄(説話)
古今著聞集(説話)橘成季,
平家物語(軍記物) 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…
太平記(軍記物)
お伽草子(物語) 一寸法師の話など


江戸時代~昭和作者代表作名・分野(ジャンル)の順です。
青字はよく出題される付随情報。

江戸時代

井原西鶴 日本永代蔵、世間胸算用、好色五人女(浮世草子)
松尾芭蕉 奥の細道、笈の小文(紀行文)
近松門左衛門 国姓爺合戦、曽根崎心中(戯曲)
上田秋成 雨月物語(読本)
本居宣長 玉勝間(随筆)、古事記伝
滝沢馬琴 南総里見八犬伝(読本)
小林一茶 おらが春(俳文)
十返舎一九 東海道中膝栗毛(滑稽本)

明治時代

二葉亭四迷 浮雲(小説) 言文一致体
樋口一葉 たけくらべ(小説)
島崎藤村 若菜集(詩集)、破戒、夜明け前(小説)
正岡子規 歌よみに与ふる書(歌論)
与謝野晶子 みだれ髪(歌集)
夏目漱石 吾輩は猫である、坊ちゃん、草枕、明暗、こころ、それから、三四郎(小説)
北原白秋 邪宗門(詩集)
石川啄木 一握の砂(歌集)

大正時代

斉藤茂吉 赤光(歌集)
高村光太郎 道程、智恵子抄(詩集)
芥川龍之介 羅生門、鼻、杜子春(小説)
森鴎外 高瀬舟、山椒太夫、雁、舞姫(小説)
志賀直哉 暗夜行路、城の崎にて、和解(小説) 白樺派
川端康成 伊豆の踊子、雪国、山の音(小説) ノーベル文学賞
井伏鱒二 山椒魚、黒い雨(小説)

昭和時代

山本有三 路傍の石(小説)
下村湖人 次郎物語(小説)
太宰治 斜陽、人間失格、走れメロス(小説)
谷崎潤一郎 細雪、刺青(小説)
木下順二 夕鶴(戯曲)
三島由紀夫 金閣寺、潮騒(小説)
井上靖 天平の甍、しろばんば、楼蘭(小説)


外国文学国別にまとめました。
作者名が前、後の(  )内が代表作です。

イギリス

シェークスピア(ハムレット、ベニスの商人)
ディケンズ(二都物語、クリスマス・カロル)
モーム(人間の絆、月と六ペンス)

フランス

スタンダール(赤と黒、パルムの僧院)
ユゴー(レ・ミゼラブル)
バルザック(谷間の百合、ゴリオ爺さん)
モーパッサン(女の一生)
ゾラ(居酒屋、ナナ)
ジード(狭き門)
サン=テグジュペリ(星の王子様)

アメリカ

パール=バック(大地)
ヘミングウェイ(老人と海)
スタインベック(怒りの葡萄)

ドイツ

ゲーテ(若きウェルテルの悩み)
トーマス=マン(魔の山)
ヘッセ(車輪の下)

ロシア

ドストエフスキー(罪と罰、カラマーゾフの兄弟)
トルストイ(戦争と平和、復活、アンナ・カレーニナ)
ツルゲーネフ(猟人日記、初恋、父と子)
チェーホフ(三人姉妹、桜の園)

その他の国

《スペイン》 セルバンテス(ドン・キホーテ)
《デンマーク》 アンデルセン(マッチ売りの少女、人魚姫)
《ノルウェー》 イプセン(人形の家)
《ベルギー》 メーテルリンク(青い鳥)
《中国》 魯迅(阿Q正伝)


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夏休み特別企画・国語編。今日は、詩・短歌・俳句・漢文・古文で知っておかないといけない知識事項をまとめました。入試国語の配点の大部分は読解問題ですが、だからこそ知識事項をきちんと勉強しておかないと意外に差がついてしまいます。

詩の種類

言葉による分類…口語詩・文語詩…口語詩は現代語、文語詩は古い書き言葉で書かれた詩
形式による分類…自由詩・定型詩・散文詩…自由詩は形式が自由、定型詩は語数が決まっている(五・七や七・五が多い)、散文詩は行分けがされていない
内容による分類…叙情詩・叙景詩・叙事詩…叙情詩は心情、叙景詩は景色、叙事詩は事件を叙述する、ほとんどの詩が叙情詩
現代詩のほとんどは口語自由詩で叙情詩である

表現技法

比喩(直喩・隠喩)…たとえ
直喩=「ように」をもちいる、隠喩=「ように」をもちいない
擬人法…人でないものを人間にたとえる
倒置法…言葉の順序を通常と入れ替える
体言止め…文末を名詞で止めて余韻を残す
対句…対照的な語を並べリズム感を出す
反復…繰り返し

短歌

句切れ…意味や調子が大きく切れる場所
(初句切れ、二句切れ、三句切れ、四句切れ、句切れなし)
破格…字余り、字足らず
枕詞…特定の語を導き出すための言葉
(たらちねの+母、くさまくら+廟、ひさかたの+光、あしひきの+山)
掛詞…一語に2つ以上の意味を持たせた語
歌調…五七調(素朴、力強い)・七五調(やさしい、優雅)

俳句

季語(季題)…季節を表す言葉を1つ詠みこむ
注意すべき季語として…
春(2~4月)残雪、梅、椿、菜の花
夏(5~7月)若葉、青葉
秋(8~10月)七夕、夜寒、月、朝顔
冬(11~1月)時雨、小春、枯れ野、落ち葉、大根、ねぎ
切れ字(ぞ、かな、や、けり)…強調するところを示す
松尾芭蕉の代表的な句の初句  山路来て…、開かさや…、五月雨を…、旅に病んで…
与謝蕪村の代表的な句の初句  春の海…、菜の花や…
小林一茶の代表的な句の初句  雪とけて…、大根引き…、雀の子…

漢文

書き下し文…訓点をつけて日本人が読めるようにした工夫
返り点…レ点、一・二点など訓読するときの順序を示す符号
漢詩の分類 1行の字数…五言と七言、漢詩の行数…絶句(4行)、律詩(8行)
五言絶句・七言絶句  1行ずつ起・承・転・結となる
五言律詩・七言律詩  2行ずつ首連・頷連・頚連・尾連となる
有名な詩人と代表作
杜甫「春望」 李白「静夜思」 白楽天「長恨歌」

古文

歴史的かなづかいを読むときの注意

は・ひ・ふ・へ・ほ⇒わ・い・う・え・お(を)
を⇒お    ぢ⇒じ    づ⇒ず    
ア段+う⇒オ段+う…  まうす⇒もうす、かうし⇒こうし
エ段+う⇒イ段+ょう…  けふ⇒きょう、てふ⇒ちょう
イ段+う⇒イ段+ゅう…  うつくしう⇒うつくしゅう
くわ⇒か  ぐわ⇒が  む⇒ん…やむごとなし⇒やんごとなし

古文特有の語の意味

あはれ  しみじみとした趣がある、風流だ
ありがたし  めずらしい
うつくし  かわいい
めでたし  美しい、立派だ
をかし  趣がある

いと  大変、非常に
いみじ  はなはだしい
さらなり  言うまでもない
とく 急いで




1月 睦月 むつき
2月 如月 きさらぎ
3月 弥生 やよい


4月 卯月 うづき
5月 皐月 さつき
6月 水無月 みなづき


7月 文月 ふみづき
8月 葉月 はづき
9月 長月 ながつき


10月 神無月 かみなづき(かんなづき)
11月 霜月 しもつき
12月 師走 しわす

十二支が方位や時刻を表す

ね うし とら う たつ み うま ひつじ さる とり いぬ い
子  丑  寅  卯  辰  巳  午  未  申  酉  戌  亥
時刻を表す(夜11時~1時=ね、1時~3時=うし、例えば、うしみつどき=午前2時過ぎ)
方位を表す(北=ね、東=う 南=うま 西=とり 例えば、たつみ=南東、いぬい=北西)

その他

係り結びの法則

上に「ぞ・なむ・や・か・こそ」の係助詞がくると、「ぞ・なむ・や・か」のときは述語を「連体形」(「けり」であれば「ける」)、「こそ」のときは「已然形」(「けり」であれば「けれ」)で結ぶというきまり

主語を見つける問題⇒古文は主語を示す「が」が省略されていることが多いから、補って読む。

会話部分を見つける問題⇒「いはく(~が言うことには)」の後から、「~と」の前までが会話部分である
いはく「…(会話部分)…」と


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夏休み企画・国語編、今日は「活用のある自立語」=「用言」=「動詞・形容詞・形容動詞」の覚え方をまとめます。

まず、動詞の「活用形」と「活用の種類」から。
最初にこの2つをしっかり区別しておきましょう。
活用形」とは、動詞の変化の形、未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形の6つのことです。
活用の種類」とは、動詞の変化の仕方5種類、五段活用、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用のどれにあたるかのことです。


活用形

未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形の6つが、「何に続くか」を正確に覚えてください。ここが曖昧だと理解も中途半端になってしまいます。

未然形…「ない」と「う」に続きます。例:「書か」ない、「書こ」う
連用形…「ます」「た」に続きます。例:「書き」ます、「書い」た
終止形…言い切りの形(辞書に載っている形)です。例:「書く」
連体形…体言、名詞に続きます。「とき」に続くと覚えてもよい。例:「書く」とき
仮定形…助詞の「ば」に続きます。例:「書け」ば
命令形…ひとに命令する形です。例:「書け」

そして、上の例で変化していない(活用していない)「書(か)」の部分を語幹といいます。

未然…「ない」「う」
連用…「ます」
「た」
終止…言い切り
連体…「とき」
仮定…「ば」
命令…命令


と、しっかり覚えておいてください。
それだけで、活用形の問題はほぼ100%正解することができます。


活用の種類

動詞の変化の仕方が、五段活用、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用のどれにあたるかの問題です。

ものを覚えるときの鉄則、「代表例を覚え、そこから類推する」は、ここでも最も有効な暗記法です。代表的なものを1つだけ頭に刻んでおきます。
五段活用…書く
上一段活用…見る
下一段活用…寝る
カ行変格活用…来る
サ行変格活用…する

そうすると、「似る」は「見る」と同じ、「出る」は「寝る」と同じ、「勉強する」は「する」の仲間というふうに見当をつけることができます。

もう一つの覚え方
助動詞の「ない」をつけたとき、何の段で活用するかで五段活用、上一段活用、下一段活用の3つは識別できます。「ない」の前を伸ばして読んでみてください。
歩かァない…ァ(ア段)になったら五段活用
起きィない…ィ(イ段)になったら上一段活用
考えェない…ェ(エ段)になったら下一段活用

余談:「歩く」のように、歩かない・歩きます・歩く・歩くとき・歩けば・歩け・歩こうと、ア行・イ行・ウ行・エ行・オ行の5つ全部に変化するものが五段活用です。
「起きる」は起きない・起きます・起きる・起きるとき・起きれば・起きろ起きよと5行のうち「起きィ」だけ、上の方のイ一段でしか活用しないので上一段活用です。
同様に「考える」は下のほうの行、エの段一段の活用しかないので下一段活用ということになります。


残ったカ行変格活用、サ行変格活用ですが、この2つは「ない」をつけての分類はしません。
含まれる動詞が少ないので、カ行変格活用は「来る」の1語だけ、サ行変格活用は「する」と「~する」(例:努力する、練習する)だけと覚えたほうが間違いません。


動詞について:おまけ

音便

発音しやすいように本来とは違う発音に変わることを音便と言います。
「書きた」は「書いた」になる…イ音便
「飲みだ」が「飲んだ」になる…撥(はつ)音便
「待ちて」が「待って」になる…促(そく)音便

自動詞と他動詞

国語では別の説明をしている本が多いのですが、英語と同じと覚えたほうが後々便利だと思います。
自動詞…目的語をとらない  例:音が出るの「出る」
他動詞…目的語(~を)をとる  例:音を出すの「出す」

可能動詞

「~できる」という意味を持たせると別の動詞になります。例:読む(普通の動詞)→読める(可能動詞)
もとの動詞は五段活用、可能動詞になると下一段活用の動詞です。

補助動詞

「これは本である」の「ある」、「犬が走っている」の「いる」などを補助動詞と言います。「ある」「いる」にほとんど意味がありません。
「本がある」の「ある」、「犬がいる」の「いる」は「存在する」という意味がありますから、補助動詞ではなく普通の動詞です。


形容詞・形容動詞の活用形

動詞と違って「ない・う」「ます・た」「言い切り」「とき」「ば」「命令」では考えないのが普通です。
動詞と異なり、形容詞、形容動詞とも活用語尾が決まっている、つまり1種類しかありませんので、お経のように何度も唱えて丸暗記します。

形容詞

未然形「かろ」、連用形「かっ」「く」、終止形「い」、連体形「い」、仮定形「けれ」、命令形はない、と覚えます。「かろ・かっ・く・い・い・けれ」と何度も唱えて暗記してください。
連用形だけ「かっ・く」の2つがある、命令形は存在しない、この2点を忘れないように。

「青い」でも、「長い」でも、「強い」でも、語幹の「あお」「なが」「つよ」が違うだけで、語尾が「かろ・かっ・く・い・い・けれ」と活用することは共通です。

形容動詞

形容詞と同じ覚え方をします。
未然形「だろ」、連用形「だっ」「で」「に」、終止形「だ」、連体形「な」、仮定形「なら」、命令形はない、と覚えます。「だろ・だっ・で・に・だ・な・なら」と何度も唱えて暗記してください。
連用形だけ「だっ・で・に」の3つある、命令形は存在しないことの2点を忘れないように。

「見事だ」でも、「静かだ」でも、「大切だ」でも、語幹の「見事」「静か」「大切」が違うだけで、語尾が「だろ・だっ・で・に・だ・な・なら」と活用することは共通です。



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今日は国語の夏休み特別企画。入試によくでる漢字の問題を集めました。
国語クイズとして親子で正解数を競うのも面白いかもしれません。


入試によく出る「読み」を間違いやすい漢字…熟語60問

斡旋 意図 円滑 会釈 会得 完遂 遂行 精進 率直 引率

あっせん いと えんかつ えしゃく えとく かんすい すいこう しょうじん そっちょく いんそつ

流布 流転 解熱 解毒 漸次 暫時 普請 功徳 逐次 唯一

るふ るてん げねつ げどく ぜんじ ざんじ ふしん くどく ちくじ ゆいいつ

知己 建立 荘厳 添付 添削 類似 如実 柔和 既定 体裁

ちき こんりゅう そうごん てんぷ てんさく るいじ にょじつ にゅうわ きてい ていさい

出納 重宝 光明 遊説 発起 境内 真紅 暴露 風情 句読

すいとう ちょうほう こうみょう ゆうぜい ほっき けいだい しんく ばくろ ふぜい くとう

久遠 成就 享受 虚偽 緩和 時雨 克服 措置 均衡 強情

くおん じょうじゅ きょうじゅ きょぎ かんわ しぐれ こくふく そち きんこう ごうじょう

執着 為替 頒布 赤銅 緑青 渋滞 示唆 折衷 平穏 安穏

しゅうちゃく かわせ はんぷ しゃくどう ろくしょう じゅうたい しさ せっちゅう へいおん あんのん


入試によく出る「読み」を間違いやすい漢字…訓読み39問

結う 省みる 省く 断つ 断る 著す 著しい 率いる 承る 繕う

ゆう かえりみる はぶく たつ ことわる あらわす いちじるしい ひきいる うけたまわる つくろう

携える 顧みる 競う 臨む 滞る 催す 促す 陥る 拒む 募る

たずさえる かえりみる きそう のぞむ とどこおる もよおす うながす おちいる こばむ つのる

戒める 潔い 穏やか 趣 試みる 快い 和らぐ 和む 専ら 担う

いましめる いさぎよい おだやか おもむき こころみる こころよい やわらぐ なごむ もっぱら になう

額 厳か 過ち 潜む 潤う 漂う 乏しい 赴く 健やか 

ひたい おごそか あやまち ひそむ うるおう ただよう とぼしい おもむく すこやか


筆順がよく出題される漢字8字

必 右 成 女 発 飛 衆 医


誤りやすい部首15問

(へん) 快 神 裸

りっしんべん しめすへん ころもへん

(つくり)列 郡 雄 願

りっとう おおざと ふるとり おおがい

(かんむり)発

はつがしら

(あし) 然

れっか(れんが)

(たれ) 厚 床 痛

がんだれ まだれ やまいだれ

(にょう)延

えんにょう

(かまえ)術 医

ぎょうがまえ(ゆきがまえ) かくしがまえ



よく出る対義語26組
(上下の熟語が対義語になっています)

積極 鈍感 真実 需要 慎重 反抗 自然 現実 集合 許可

消極 敏感 虚偽 供給 軽率 服従 人工 理想 解散 禁止

主観 悲観 平凡 絶対 偶然 精密 形式 創造 原因 生産

客観 楽観 非凡 相対 必然 粗雑 内容 模倣 結果 消費

破壊 一般 具体 総合 単純 困難

建設 特殊 抽象 分析 複雑 容易


よく出る四字熟語38問

「読み」と「書き取り」

異口同音 以心伝心 一日千秋 因果応報 我田引水

いくどうおん いしんでんしん いちじつせんしゅう いんがおうほう がでんいんすい

危機一髪 言語道断 自業自得 針小棒大 千変万化

ききいっぱつ ごんごどうだん じごうじとく しんしょうぼうだい せんペんばんか

大器晩成 単刀直入 傍若無人 本末転倒 無我夢中

たいきばんせい たんとうちょくにゅう ぼうじゃくぶじん ほんまつてんとう むがむちゅう

起承転結 疑心暗鬼 呉越同舟 東奔西走 温故知新

きしょうてんけつ ぎしんあんき ごえつどうしゅう とうほんせいそう おんこちしん

縦横無尽 一朝一夕 意味深長 空前絶後 五里霧中

じゅうおうむじん いっちょういっせき いみしんちょう くうぜんぜつご ごりむちゅう


千差万別 前代未聞 馬耳東風 付和雷同 臨機応変

せんさばんべつ ぜんだいみもん ばじとうふう ふわらいどう りんきおうへん

絶体絶命 取捨選択 支離滅裂 一期一会 四面楚歌

ぜったいぜつめい しゅしゃせんたく しりめつれつ いちごいちえ しめんそか

半信半疑 暗中模索 自画自賛

はんしんはんぎ あんちゅうもさく じがじさん


よく出る故事成語18問

「読み」と「意味」

烏合の衆 杞憂 画竜点晴 玉石混交 漁夫の利

うごうのしゅう きゆう がりょうてんせい ぎょくせきこんこう ぎょふのり

蛍雪の功 五十歩百歩 左遷 矛盾 蛇足

けいせつのこう ごじっぼひゃっぽ させん むじゅん だそく

羊頭狗肉 竜頭蛇尾 牛耳をとる 推敲 出藍の誉れ

ようとうくにく りゅうとうだび ぎゅうじをとる すいこう しゅつらんのほまれ

他山の石 背水の陣 春秋に富む

たざんのいし はいすいのじん しゅんじゅうにとむ


入試によく出る「漢字書き取り問題」97問

ふくざつ せんもん しょうたい しょうかい ようい

複雑 専門 招待 紹介 容易・用意

ゆうびん かてい きけん こんなん しゅうかん

郵便 仮定・過程 危険 困難 習慣・週刊

えんそう きたい こうか こうふん じゅんび

演奏 期待 効果・高価 興奮 準備

たいしょう てんらん おうふく かくちょう ぎゃく

対象・対称・対照 展覧 往復 拡張・格調 逆

そうぞう そんざい ひひょう めんみつ いんしょう

創造・想像 存在 批評 綿密 印象

かんさつ かんしん きゅうしゅう きんむ こうえん

観察 関心・感心・歓心 吸収 勤務 講演・公演・公園

こうせい しげん すいそく ぼうえき ほうふ

構成・後世・校正・更生 資源 推測 貿易 豊富

いんさつ うちゅう かんせん きおく きぼ

印刷 宇宙 感染・幹線 記憶 規模

けんとう こうせき こしょう じょうたい ほうもん

検討・見当 功績 故障 状態 訪問

いがい かいてき かくにん きかい げんかく

意外・以外 快適 確認 機械・機会 厳格

こんざつ しゅうしょく せいこう たんじゅん みじゅく

混雑 修飾・就職 成功・精巧 単純 未熟

るいじ あずける ためる かりる かす

類似 預ける 貯める 借りる 貸す

いとなむ とどく そなえる あびる きざむ

営む 届く 備える・供える 浴びる 刻む

おぎなう かんげい げんしょう こうかい じょこう

補う 歓迎 現象・減少 公開・後悔・航海 徐行

さいばい はかい ぎょうれつ つとめる すすめる

栽培 破壊 行列 勤める・努める・務める 勧める・薦める

はかる おさめる うつす あらわす ぼうがい

図る・測る・量る・計る 納める・治める・修める・収める 移す・写す・映す 表わす・
現わす・著す 妨害

きせつ しゅうかく かくとく ぎせい そしき

季節 収穫 獲得 犠牲 組織

あやまる おだやか かくす かいほう しじ

誤る・謝る 穏やか 隠す 開放・解放・快方・介抱 指示・支持

ついきゅう せいかく まさつ ていねい かんきょう

追求・追及・追究 正確・性格 摩擦 丁寧 環境

ふんいき ほしょう

雰囲気 保証・保障・補償



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「古文を気楽に読もう」の(16)は、無住(むじゅう)の随筆『沙石集(しゃせきしゅう)』です。

無住(1226年~1312年)は、鎌倉時代に活躍した僧侶です。18歳で出家し、諸国をまわって仏教諸宗を学んだ博識家で、上野国(こうずけのくに:群馬県)や尾張国(おわりのくに:愛知県)で寺院を開くかたわら、『沙石集』、『妻鏡』、『雑談集(ぞうだんしゅう)』などの作品を著しました。

沙石集(しゃせきしゅう)』は、わかりやすい逸話(=沙(しゃ:小粒の砂)や石)を題材に、金や宝石にあたる仏教の真髄を庶民に教えさとすという意味で名づけられた説話集です。

日本、中国、インドの伝説や日本各地の寓話の他、庶民の生活を伝える話、滑稽な話などで構成されており、『徒然草』や後の時代の狂言、落語に影響を与えたと言われています。

今日とりあげるのは、「藤の木のこぶを信じて馬を見つける話」です。

まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「作者の伝えたいことは何か=何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、読んでみましょう。


『藤の木のこぶを信じて馬を見つける話』

ある在家人(ざいけにん)、山寺の僧を信じて、世間出世のこと、深く頼みて、病むこともあれば、薬なども問ひけり。

この僧、医骨もなかりければ、よろづの病に「藤のこぶを煎じてめせ」と教へける。

信じてこれを用ゐけるに、よろづの病癒えずといふことなし。

ある時、馬を失ひて、「いかがつかまつるべき」といへば、例の「藤のこぶを煎じてめせ」といふ。

心得がたかりけれども、様ぞあるらんと信じて、あまりに取り尽くして、近々には、なかりければ、少し遠行きて、山のふもとを尋ぬるほどに、谷の辺より、失ひたる馬を見つけけり。

これも信のいたすところなり。


読むときのヒント

ある在家人(ざいけにん)、山寺の僧を信じて、世間出世のこと、深く頼みて、病むこともあれば、薬なども問ひけり。
在家人(ざいけにん):出家していない人、僧侶ではない一般の人

世間出世:世間とは世の中のこと、出世とは仏教の教えに関すること(現代語の「出世」とは意味が違います)

「ある在家人」が、田舎寺の僧侶を信じきって、何ごとにつけ頼みにして、病気になれば飲む薬まで質問をしていたのです。


この僧、医骨もなかりければ、よろづの病に「藤のこぶを煎じてめせ」と教へける。
医骨(いこつ):医術の心得

よろづの:よろずの、いろいろな、さまざまな


藤のこぶ:藤の木にできるこぶのようなもの
虫に食われた場所の細胞が増殖してこぶのようになったもので、昔から、癌や食欲不振、便秘に効果があるとされており、現在医学でもその効用が実証されています。


煎じて(せんじて):「煎ずる」薬や茶などを煮つめて成分を取り出すこと

めせ(召せ):飲みなさい


信じてこれを用ゐけるに、よろづの病癒えずといふことなし。
癒(い)えずといふことなし:治らないということがなかった、すべて治った


ある時、馬を失ひて、「いかがつかまつるべき」といへば、例の「藤のこぶを煎じてめせ」といふ。
「いかがつかまつるべき」:どうしたらいいでしょうか
・「つかまつる」…「する」、「行う」という意味の、「為(な)す」、「行(おこな)ふ」の謙譲語


心得がたかりけれども、様ぞあるらんと信じて、あまりに取り尽くして、近々には、なかりければ、少し遠行きて、山のふもとを尋ぬるほどに、谷の辺より、失ひたる馬を見つけけり。
心得がたかりけれども:納得しにくいことではあったけれども
「心得(こころう)」は「納得する」「理解する」
「がたかり」は、形容詞「がたし」(~するのがむつかしい)の連用形


様(さま):理由

あるらん:あるのであろう
「らん」は、推量の助動詞「らむ」

あまりに取り尽くして:何かにつけて「藤のこぶを飲め」と言われるので、近辺の藤のこぶは取り尽してしまい遠くまで藤のこぶを採りにいったことで、偶然、逃げた馬を見つけることができたのです。


これも信のいたすところなり。
:信心、信仰
「これも深く信じた結果である」


文の主題(テーマ)を読み取ろう

現代人から見るといい加減なお坊さんと、そのお坊さんの言うことは何でも素直に信じる純朴な人の物語です。

おなかの病気にしか効かないはずの藤のこぶをよろずの病に「煎じて飲め」と勧める僧ですが、僧の言葉を全面的に信じて素直に飲む人は「
よろづの病癒えずといふことなし」。

そしてきわめつけは、馬を失った人へのアドバイスがまた
「藤のこぶを煎じてめせ」であったのに、さすがに今度は半信半疑であった人がそれでも僧の言葉を信じてその指示に従ったところ、見事に馬を探し当てたことです。

その理由が合理的に説明されていることにも感服してしまいます。

キリスト教でいう「信じるものは救われる」、日本のことわざの「いわしの頭も信心から」などを髣髴(ほうふつ)とさせる逸話です。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

ある在家人(ざいけにん)、山寺の僧を信じて、世間出世のこと、深く頼みて、病むこともあれば、薬なども問ひけり。

この僧、医骨もなかりければ、よろづの病に「藤のこぶを煎じてめせ」と教へける。

信じてこれを用ゐけるに、よろづの病癒えずといふことなし。

ある時、馬を(1)失ひて、「(2)いかがつかまつるべき」といへば、例の「藤のこぶを煎じてめせ」と(3)いふ

(4)心得がたかりけれども、様ぞあるらんと信じて、あまりに(5)取り尽くして、近々には、なかりければ、少し遠行きて、山のふもとを尋ぬるほどに、谷の辺より、失ひたる馬を見つけけり。

これも(   A   )。



問い一、傍線(1)「失ひて」・(3)「いふ」の主語を文章中の言葉で書け。


解答 (1)在家人、(3)僧


問い二、傍線(2)「いかがつかまつるべき」の意味として適切なものを次から一つ選べ。
ア いつごろたずねたらよいでしょうか
イ どうしたらよいでしょうか
ウ 誰に聞いたらわかるでしょうか
エ なにがいちばん効くのでしょうか


解答 イ どうしたらよいでしょうか


問い三、傍線(4)「心得がたかり」は「納得しにくい」という意味だが、どうして納得しにくかったのか、書け。


解答 馬を失ってどうしたらよいかを僧に尋ねたのに、薬である藤のこぶを煎じて飲めと言われたから。(同意可)


問い四、傍線(4)「取り尽くして」は何を取り尽くしたのか。文章中から抜き出して書け。



解答 藤のこぶ


問い五、空欄Aにあてはまるものとして適切なものを次から一つ選べ。
ア 孝行の深き心よりおこれり
イ 信のいたすところなり
ウ 愚かなる人の世のならひなり
エ 罪深きことなり



解答





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「古文を気楽に読もう」の(15)は、上田秋成(うえだあきなり)の随筆『胆大小心録(たんだいしょうしんろく)』です。

上田秋成(1734年~1809年)は、江戸時代中期(8代将軍徳川吉宗~11代将軍徳川家斉のとき)の歌人・国学者・読本作家です。
4歳で商家の養子となり、店を火事で失ったあと、40歳を過ぎて医者となり、そのかたわら俳諧をたしなみ、国学を学び、読本(よみほん:小説)の作者として活躍しました。

代表作は怪異小説集『雨月物語』です。
『雨月物語』は、恨みを残して死んだ霊魂や、かなえられない欲望に身を焦がす幽霊が登場する怪異小説ですが、文学的な価値も高く、芥川龍之介や三島由紀夫も座右の書として愛しました。

胆大小心録』は上田秋成晩年の随筆です。

今日とりあげるのは、「医師(くすし)鶴田なにがしの話」です。

まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「作者の伝えたいことは何か=何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、読んでみましょう。


『医師(くすし)鶴田なにがしの話』

伊勢人(いせびと)村田道哲、医生にて大坂に寓居(ぐうきょ)す。

ひととせ天行病にあたりて苦悩もつともはなはだし。

我が社友の医家あつまりて、治することなし。

道哲が本郷より兄といふ人来たりて、我が徒にむかひ、恩を謝して後、「今は退(の)かせたまへ。」と言ひしかば、皆かへりしなり。

兄、道哲に言ふ、「なんぢ京阪(けいはん)に久しく在(あ)りて、医事は学びたらめど、真術をえ学ばず。諸医助かるべからずと申されしなり。命を兄に与ふべし。」とて、

牀(しょう)の上ながら赤はだかに剥(は)ぎて、扇をもて静かにあふぎ、また時どき薄粥(うすがゆ)と熊の胆(い)とを口にそそぎ入れて、一、二日あるほどに、熱少しさめ物くふ。

つひに全快したりしかば、国につれてかへりしなり。

これは兄が相可といふ里に、鶴田なにがしといふ医師(くすし)の、薄衣薄食といふことを常にこころえよとて教えしかば、かの里近くに住む人は病せずとぞ、これはまことに医聖なり。

その教へに、「よきほどと思ふは過ぎたるなり。」とぞ。

しかるべし。


読むときのヒント

伊勢人(いせびと)村田道哲、医生にて大坂に寓居(ぐうきょ)す。
伊勢人(いせびと):伊勢(三重県)の人
医生:医学を学ぶ学生
寓居す:伊勢から来て大阪に仮住まいをしていた

ひととせ天行病にあたりて苦悩もつともはなはだし。
ひととせ:ある年
天行病:流行り病(はやりやまい)

もつとも:もっとも

我が社友の医家あつまりて、治することなし。
我が社友の:同じ門下の

道哲が本郷より兄といふ人来たりて、我が徒にむかひ、恩を謝して後、「今は退(の)かせたまへ。」と言ひしかば、皆かへりしなり。
道哲が本郷:道哲の故郷
退(の)かせたまへ:お帰りください

言ひしかば:言ったところ
・「しか」…過去の助動詞「き」の已然形(いぜんけい)が「しか」
・「ば」…「ば」は接続助詞、~したところ

皆かへりしなり:皆、帰ってしまった

兄、道哲に言ふ、「なんぢ京阪(けいはん)に久しく在(あ)りて、医事は学びたらめど、真術をえ学ばず。諸医助かるべからずと申されしなり。命を兄に与ふべし。」とて、
兄、道哲に言ふ:兄が道哲に言うことには
なんじ:おまえは
京阪:京都と大阪

学びたらめど:学んできたけれども
・「たら」…存続の助動詞「たり」の未然形
・「め」…推量の助動詞「む」の已然形
・「ど」…逆接の接続助詞


学ば:学ぶことができなかった
え~ず…「え」は副詞、「ず」は否定の助動詞で、~できなかったの意味

助かるべからず:助からないであろう
与ふべし:任せたほうがよい

牀(しょう)の上ながら赤はだかに剥(は)ぎて、扇をもて静かにあふぎ、また時どき薄粥(うすがゆ)と熊の胆(い)とを口にそそぎ入れて、一、二日あるほどに、熱少しさめ物くふ。
牀(しょう)の上ながら:寝台の上に寝かせたまま
赤はだか:すっ裸
熊の胆:くまのい、熊のたんのうを干したもの、胃腸の薬として用いた
熱少しさめ物くふ:熱が少し冷めて物を食べた

つひに全快したりしかば、国につれてかへりしなり。
したりしかば:したので
・「しか」…過去の助動詞「き」の已然形(いぜんけい)が「しか」
・「ば」…「ば」は接続助詞、~したので


これは兄が相可といふ里に、鶴田なにがしといふ医師(くすし)の、薄衣薄食といふことを常にこころえよとて教えしかば、かの里近くに住む人は病せずとぞ、これはまことに医聖なり。
相可といふ里:相可という村
医師(くすし)の:医者が
「薄衣薄食といふことを常にこころえよ」:「薄着と少食の二つをいつも心得ておきなさい」、医者の鶴田の言葉

病せずとぞ:病気をしないということだ
・とぞ…:
格助詞「と」+係助詞「ぞ」、「~と」を強調する表現

その教へに、「よきほどと思ふは過ぎたるなり。」とぞ。
その教へに:鶴田という医者の教へに
よきほどと思ふは過ぎたるなり」:これくらいで良いと思うくらいだと実は着過ぎ食べ過ぎだ

しかるべし。

しかるべし:その通りである
・動詞「しかり」の連体形+
推量の助動詞「べし」


文の主題(テーマ)を読み取ろう

江戸時代は、誰でも医者を名乗ることができました。
現代のように医師国家試験に合格することが必要な仕事ではなかったのです。

しかし、薬の知識や医療技術がないと信用されませんから、通常は確かな医者の弟子になって知識を習得し、技術をみがいた後、開業しました。
都会の大坂(今は大阪)や京都には医者を養成する塾もありました。

伊勢の国から大阪に出て医学を学んでいた村田道哲が病に倒れ、同門の医師たちは治すことができませんでした。

故郷から出てきた道哲の兄が、村の鶴田という医師の教えに従って弟を治療し、故郷に連れ帰ります。

この医者の教えは、薄着と少食でした。
薄着と少食で、村の人たちは医師の教えを守り、病気をすることもなかったというのです。

上田秋成はこの医師を真の「医聖」だと評しています。

よきほどと思ふは過ぎたるなり」の言葉に、秋成は「しかるべし」と、全面的に同意しています。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

伊勢人(いせびと)村田道哲、医生にて大坂に寓居(ぐうきょ)す。

ひととせ天行病にあたりて苦悩もつともはなはだし。

我が社友の医家あつまりて、(1)治することなし

道哲が本郷より兄といふ人来たりて、我が徒に(a)むかひ、恩を謝して後、「今は退(の)かせたまへ。」と(ア)言ひしかば(b)皆かへりしなり

兄、道哲に言ふ、「なんぢ京阪(けいはん)に久しく在(あ)りて、(2)医事は学びたらめど、真術をえ学ばず。諸医(3)助かるべからずと申されしなり。(4)命を兄に与ふべし。」とて、

牀(しょう)の上ながら赤はだかに剥(は)ぎて、扇をもて静かにあふぎ、また時どき薄粥(うすがゆ)と熊の胆(い)とを口にそそぎ入れて、一、二日あるほどに、熱少しさめ物くふ。

つひに全快したりしかば、国につれてかへりしなり。

これは兄が相可といふ里に、鶴田なにがしといふ医師(くすし)の、薄衣薄食といふことを常にこころえよとて(イ)教えしかば、かの里近くに住む人は病せずとぞ、これはまことに医聖なり。

その教へに、「(5)よきほどと思ふは過ぎたるなり。」とぞ。

しかるべし。




問い一、傍線(a)「むかひ」・(b)「かへりしなり」を現代かなづかいで書け。

語の最初にない「は・ひ・ふ・へ・ほ」は現代かなづかいでは「わ・い・う・え・お」です。


解答 a「むかい」、b「かえりしなり」


問い二、傍線(ア)「言ひしかば」・(イ)「教へしかば」の主語をそれぞれ文章中から書き抜け。


解答 (ア)兄、(イ)医師(鶴田なにがしといふ医師)


問い三、傍線(1)「治することなし」を現代語に訳せ。


解答 治すことができなかった


問い四、(2)「医事は学びたらめど、真術をえ学ばず」はどのような気持ちから言った言葉か。最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。

ア、医学の修業をしたことが無駄になったことに不満を感じていった言葉。
イ、医学の修業をやめて故郷に帰って家業を継ぐことを勧めていった言葉。
ウ、医学の修業が完全に終わるまで一層励むように期待していった言葉。
エ、医学の修業が単に技術の習得にとどまっていることを批判していった言葉



解答


問い五、傍線(3)「助かるべからず」の現代語訳として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 助けてはならない
イ 助けようとはしない
ウ 助からないだろう
エ 助かるだろう



解答


問い六、傍線(4)「命を兄に与ふべし」の意味として最も適当なものを次から選び、記号で答えよ。
ア おまえの命の分まで兄の私が長生きしよう。
イ おまえの医学の知識で私に治療法を命じてくれ。
ウ 医学ではだめだから、兄と一緒に精神力で病気を治そう。
エ 医者が治せないおまえの命を兄の私に預けなさい



解答


問い七、傍線(5)「よきほどと思ふは過ぎたるなり」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア ちょうどよいと思う程度だと実は多過ぎるのだ。
イ このくらいでよいと思うことは思い上がりである。
ウ よい時代と思えるものは常に過去のことである。
エ どんなことでも過ぎたらよいものに思えてくる。


解答


問い八、「鶴田なにがし」に対するこの文章の筆者の考え方として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 鶴田なにがしの医者としての実績は認めているが、考え方には納得できないものを感じている。
イ 鶴田なにがしは人間を超えた存在であり、その考えは一般の人には受け入れられないものだとしている。
ウ 鶴田なにがしの唱える健康保持の考えを、なるほどそのとおりであると感心し納得している。
エ 鶴田なにがしの言うことを信用しておらず、田舎医者に過ぎないと軽蔑している。


解答

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「古文を気楽に読もう」の(13)、本居宣長(もとおりのりなが)の随筆『玉勝間(たまかつま)』です。

本居宣長(1730年~1801年、8代将軍吉宗~11代将軍家斉のとき)は江戸時代の国学者です。
伊勢の国(今の三重県)の松阪に生まれ、医者を業とするかたわら、賀茂真淵(かものまぶち)に入門した後、35年の歳月を費やして『古事記伝』を完成しました。
『古事記伝』は、当時ほとんど解読できなくなっていた奈良時代の歴史書『古事記』を綿密に解説した注釈書で、現在の人が『古事記』を読めるのは本居宣長の研究のおかげです。

その本居宣長の随筆が『玉勝間』です。
学問、芸術、人生に対する本居宣長の考えが綴られています。

今日とりあげるのは、「古(いにしえ)より後の世のまされること」です。

まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「作者の伝えたいことは何か=何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、読んでみましょう。


「古(いにしえ)よりも後の世のまされること」

古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。

その一つをいはむに、いにしへは、橘(たちばな)をならびなき物にしてめでつるを、
めでつる=珍重していた。

近き世には、みかんといふ物ありて、此(この)みかんにくらぶれば、橘は数にもあらずけおされたり。
けおされたり=圧倒された。

その外かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだいなどの、たぐひおほき中に、
かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだい=柑橘類(かんきつるい)の、柑子(こうじ)、柚子(ゆず)、九年母(くねんぼ)、橙(だいだい

蜜柑(みかん)ぞあじはひことにすぐれて、中にも橘によく似てこよなくまされる物なり。

此(この)一つにておしはかるべし。

或(あるひ)は古にはなくて、今はある物もおほく、いにしへはわろくて、今のはよきたぐひ多し。

これをもておもへば、今より後もまたいかにあらむ。

今に勝(まさ)れる物おほく出(い)で来べし。

今の心にて思へば、古はよろづに事たらずあかぬ事おほかりけむ。
事たらずあかぬ事=不十分で、満足できないこと。

されどその世には、さはおぼえずやありけん。

今より後また、物の多くよきがいでこん世には、今をもしか思ふべけれど、今の人、事たらずとおぼえぬが如し。
いでこん世=出て来るような時代。


読むときのヒント

古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。「昔よりも、後の時代のほうがまさっていることは、いろいろな物でも事でも多いものだ。」
「おほし」=現代仮名づかいだと「おおし」


その一つをいはむに
」は意志を表わす推量の助動詞。「~しよう」
いはむに言おうと思うのだが、

ならびなき=「ほかに比べるものがない」「最高である」

「たちばな」
日本に昔からある固有の柑橘類(かんきつるい)。直径は約5cm。みかんに比べると相当すっぱい。

みかん
みかんは、中国から肥後国(熊本県)に伝わり、15~16世紀に紀州(和歌山県)の有田に移植され、量産され始めました。江戸時代には江戸でも珍重されるようになりました。
さらに甘い種なしのうんしゅうみかん(温州みかん)が江戸時代後期から広まりました。

くらぶれば「比べたら」

たぐひおほき中に「同じ種類のものが多い中で」
たぐひ=読みは「たぐい」。「似たようなもの」、「同類のもの」。

あじはひ=「味わい」

こよなく=「格別に」

此(この)一つにておしはかるべし。=「この一つの例でも推測することができるだろう。」
「べし」=「できるだろう」
推量の助動詞。ここでは、可能の意味。


わろくて=「悪くて」

いかにあらむ=「どうだろうか」

出(い)で来べし=「出てくるだろう」
「べし」=「きっと~だろう」
推量の助動詞。ここでは、確信のある推量。

されどその世には、さはおぼえずやありけん。=「だが、その当時には、そうは思わなかったであろう。」
されど=けれども、しかし
=そう
おぼえず=思わなかった
ありけん=あろう、「けん」は「けむ」、過去の推量

いでこん=出てくるであろう

今をもしか思ふべけれど、今の人、事たらずとおぼえぬが如し。=「(未来の人が)今のことをそう(=不十分だと)思うかもしれないが、今の人が不足があるとは思わないのと同じだ。
しか=そう
べけれ
=推量の助動詞「べし」の已然形(いぜんけい)。
おぼえぬ
=おもわない、「ぬ」は打ち消しの助動詞「ず」の連体形。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

世の中は進歩するものだということを、みかんを例に述べています。

みかんを知るまでは、人はすっぱい橘を何よりも素晴らしいと思っていたのです。

このように、未来から過去を見たらばかばかしく思えるかもしれません。

しかし、見方をかえると、橘しか知らない時代の人は、橘で十分満足していたのです。

甘くおいしいみかんを知ったことが、はたして本当に幸せだったのかどうか・・・。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。


古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。

その一つをいはむに、いにしへは、橘(たちばな)を
(1)ならびなき物にしてめでつるを、
めでつる(漢字でかくと、「愛でつる」)=珍重していた。

近き世には、みかんといふ物ありて、此(この)みかんにくらぶれば、橘は数にもあらずけおされたり。
けおされたり=圧倒された。

その外かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだいなどの、たぐひおほき中に、
かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだい=柑橘類(かんきつるい)の、柑子(こうじ)、柚子(ゆず)、九年母(くねんぼ)、橙(だいだい

蜜柑(みかん)ぞあじはひことにすぐれて、中にも橘によく似てこよなくまされる物なり。

(2)此(この)一つにておしはかるべし。

或(あるひ)は古にはなくて、今はある物もおほく、いにしへはわろくて、今のはよきたぐひ多し。

これをもておもへば、今より後もまたいかにあらむ。

今に勝(まさ)れる物おほく出(い)で来べし。

今の心にて思へば、古はよろづに事たらずあかぬ事おほかりけむ。
事たらずあかぬ事=不十分で、満足できないこと。

されど
(3)その世には、さはおぼえずやありけん

今より後また、物の多くよきがいでこん世には、
(4)今をもしか思ふべけれど、今の人、事たらずとおぼえぬが如し。
いでこん世=出て来るような時代。


問い一、「おほし」、「たぐひ」、「あじはひ」を現代かなづかいで書け。


解答 おおし たぐい あじわい


問い二、傍線(1)「ならびなき物」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 他の物と並べると見劣りする物
イ 比較する物がないほど優れた物
ウ めったに手に入らない貴重な物
エ ちょうど手ごろで食べやすい物



解答


問い三、傍線(2)「この一つにておしはかるべし」とは、「このこと一つからも推量することができよう」という意味だが、どんなことが推量できるというのか。古文中から一文を書き抜け。


解答 古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。


問い四、傍線(3)「その世には、さはおぼえずやありけん」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア その時代には、さぞ不足や不満を感じていたであろう。
イ その時代には、不足や不満を感じていなかったであろう。
ウ その時代には、不足や不満を感じていたそうだ。
エ その時代には、不足や不満を感じていなかったそうだ。



解答


問い五、傍線(4)「今をもしか思ふべけれど」とは、「現代のこともそんなふうに思うだろうが」という意味であるが、どんなふうに思うというのか。思う内容を古文中から書き抜け。



解答 よろづに事たらずあかぬ事おほかりけむ


問い六、この文章の内容にあてはまるものを次のうちから二つ選び、記号で答えよ。
ア 古い時代のものごとは現代と比べるとまさっているものが多い。
イ みかんは、柑子や柚子などと比べるとまさっているが、橘の味覚にはおよばない。
ウ 古い時代には、みかんはなかったが、現代では橘よりももてはやされている。
エ 現代の人は、ものごとにあまり不足や不満を感じていない。
オ 現代人の目からすると、古い時代は暮らしやすいよい時代であった。



解答 ウ・エ


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「古文を気楽に読もう」の(12)、『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』より、「狐が妻に化けて家に来た話」です。

『今昔物語集』は、平安時代の後期、1120年以降の院政期に成立したといわれている説話集です。
作者・編者はわかっていません。
全三十一巻、1100以上の膨大な説話がおさめられています。
取り上げた説話の出典から、インド(天竺)・中国(震旦)、日本(本朝)の三部にわかれ、三部がさらに仏法部、世俗部の二部で構成されています。
各説話の冒頭が「今は昔」で始まるので、今昔物語集と名づけられました。
文学的な価値も高く、後世、芥川龍之介を初め、多くの文学者が今昔物語集を題材にした作品を発表しています。


まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか=作者の伝えたいことは何か」を理解する、の2点に留意して、読んでみましょう。


「狐が妻に化けて家に来た話」

今は昔、京にありける雑色(ぞうしき)男の妻、夕暮方に暗くなるほどに、要事ありて大路に出(いで)たりけるが、
雑色=走り使いを職業とする者  要事=用事
やや久しくかえり来ざりければ、夫、など遅くは来るならむと、あやしく思ひてゐたりけるほどに、妻入り来たり。

さてとばかりあるほどに、また同じ顔にして、有様つゆばかりも違ひたるところもなき妻入り来たり。



夫、 これを見るにあさましきこと限りなし。

何にまれ、一人は狐などにこそはあらめと思へども、いづれをまことの妻といふことを知らねば、思ひめぐらすに、
何にまれ=とにかく
後に入り来たる妻こそ、定めて狐にはあらめと思ひて、男、太刀(たち)を抜きて、後に入り来たりつる妻に走りかかりて、切らむとすれば、

その妻、「これはいかに、我をばかくはするぞ。」といひて泣けば、

また前に入り来たりつる妻を切らむとて走りかかれば、それもまた手をすりて泣きまどふ。


されば男、思ひわづらひて、とかく騒ぐほどに、

なほ前に入り来たりつる妻のあやしくおぼえければ、それを捕へていたるほどに、

その妻、あさましく臭き尿
(しと)をさとはせかけたりければ、
さとはせかけたり=さっとひっかけた
夫、臭さにたへずして、うちゆるしたりける際に、
うちゆるした=手をゆるめた
その妻、たちまちに狐になりて、戸の開きたりけるより大路に走り出て、こうこうと鳴きて逃げいにけり。
いにけり=去った
その時に男、ねたくくやしく思ひけれども、さらにかひなし。
ねたく=残念で  かひなし=しかたがない


これを思ふに、思ひ量りもなかりける男なりかし。

しばらく思ひめぐらして、二人の妻を捕へてしばり付けて置きたらましかば、つひにはあらはれなまし。
…ましかば、~まし=「もし…だったら、~であったろうに」
いとくちをしく逃がしたるなり。
 (『今昔物語集』)


読むときのヒント

夫、など遅くは来るならむと、あやしく思ひてゐたりけるほどに、
「など~ならむ」=なぜ~なのだろうか、「なぜ遅くまで帰ってこないのだろうか」
「あやしく思ひて」=不思議に思って

夫、 これを見るにあさましきこと限りなし。
あさましき=形容詞「あさまし=(異様な出来事に遭遇して)驚きあきれること」の連体形。

一人は狐などにこそはあらめ
=一人は狐のたぐいであろう

後に入り来たる妻こそ、定めて狐にはあらめ
=後に入ってきた妻のほうが、きっと狐であろう

「これはいかに、我をばかくはするぞ。」
=これはどういうことですか、なぜ私にそんなことをなさるのですか。

あさましく臭き尿(しと)
=異様にくさいおしっこを

さらにかひなし。
=もう、どうしようもない。

思ひ量りもなかりける男なりかし。
=分別のない男であることだ。

いとくちをしく
=大変、残念なことに


文の主題(テーマ)を読み取ろう

昔の人は、妖怪や物の怪(もののけ)の存在を本気で信じていました。また、狐や狸などの動物が化けて人間に悪さをすることも当たり前にあることだと思われていました。

この話では、狐が女房に化けて家に帰って来ました。

驚き騒ぐ男の様子、臭い尿を男にかけてそのすきにまんまと逃げる狐の姿が、おもしろく表現されています。

また、
実際に、まったく見分けのつかないそっくりな家族が2人、突然目の前に現われたとき、「思ひ量り」=「冷静な判断力」を持てるでしょうか。
私には、
最後の教訓も、とってつけたような説教臭さがあっておもしろく感じられます。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。


今は昔、京にありける雑色男の妻、夕暮方に暗くなるほどに、要事ありて大路に出たりけるが、

やや久しくかえり来ざりければ、夫、など遅くは来るならむと、あやしく思ひてゐたりけるほどに、妻入り来たり。さてとばかりあるほどに、また同じ顔にして、有様
(A)つゆばかりも違ひたるところもなき妻入り来たり。

夫、これを見るに
(1)あさましきこと限りなし。何にまれ、一人は狐などにこそは(B)あらめと思へども、いつれをまことの妻といふことを知らねば、思ひめぐらすに、後に入り来たる妻こそ、定めて狐にはあらめと思ひて、男、太刀を抜きて、後に入り来たりつる妻に走りかかりて、切らむとすれば、その妻、「これはいかに、我をば(2)かくはするぞ。」といひて泣けば、また前に入り来たりつる妻を切らむとて走りかかれば、(3)それもまた手をすりて泣きまどふ。
されば男、
(4)思ひ
(a)わづらひて、とかく騒ぐほどに、なほ前に入り来たりつる妻のあやしく(C)おぼえければ、それを捕へていたるほどに、その妻、あさましく臭き尿をさとはせかけたりければ、夫、臭さにたへずして、うちゆるしたりける際に、その妻、たちまちに狐になりて、戸の開きたりけるより大路に走り出て、こうこうと鳴きて逃げいにけり。その時に男、ねたくくやしく思ひけれども、さらに(b)かひなし

これを思ふに、思ひ量りもなかりける男なりかし。しばらく思ひめぐらして、二人の妻を捕へてしばり付けて置きたらましかば、つひには
(5)あらはれなまし。いとくちをしく逃がしたるなり。
 (『今昔物語集』)


雑色:走り使いをする者。
要事:用事。
何にまれ:とにかく。
さとはせかけたり:さっとひっかけた。
うちゆるした:手をゆるめた。
いにけり:去った。
ねたく:残念で。
かひなし:しかたがない。
ましかば:あとの「まし」と呼応して、「~ましかば…まし」の形で、「もし~だったら…であったろうに」。



問一 傍線a「わづらひて」・b「かひなし」をそれぞれ現代かなづかいで書け。
a
b

(解答)
a わずらいて
b かいなし


問二 線A「つゆばかりも」・B「あらめ」・C「おぼえければ」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、それぞれ記号で答えよ。
A
ア 少しも
イ 少しは
ウ 少しなら
エ 少しでも

B
ア あるだろう
イ あってほしい
ウ あるだろうか
エ ありはしない

C
ア 記憶したので
イ 思われたので
ウ 驚いたので
エ 声をあげたので

(解答)
A ア
B ア
C イ


問三 傍線(1)「あさましきこと限りなし」とは、夫が大変驚いたという意味だが、夫はなぜ驚いたのか。現代語で答えよ。

(解答)
同じ顔で、様子もまったく違わない妻が入ってきたから。


問四 傍線(2)「かくはするぞ」は「このようなことをするのですか」という意味だが、具体的にどのようなことをするというのか。現代語で答えよ。

(解答)
太刀を抜いて、後に入ってきた妻に走りよって、刀で切ろうとしたこと


問五 傍線(3)「それ」の指す言葉を古文中から書き抜け。

(解答)
前に入り来たりつる妻


問六 傍線(4)「思ひわづらひて」とあるが、夫はなぜ「思ひわづら」ったのか。最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 泣きじゃくる二人の妻があわれになったから。
イ どちらが本当の妻か見分けがつかないから。
ウ 狐に化かされて正気を失ったから。
エ 妻にからかわれている自分が情けなくなったから。

(解答)



問七 傍線(5)「あらはれなまし」は「現れただろうに」という意味だが、何が現れただろうというのか。最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 夫に加勢する人
イ 本当の妻
ウ よい知恵
工 狐の正体

(解答)



問八 古文中から擬声語を一語書き抜け。

(解答)
こうこう


問九 この文章の筆者は、夫をどのような人物と考えているか。それがわかる一文を書き抜け。


(解答)
これを思ふに、思ひ量りもなかりける男なりかし。


問十 この文章の筆者は、夫はどのように行動すべきだったといっているか。現代語で答えよ。

(解答)
落ち着いて考えて、二人の妻の両方を捕えてしばりつけておくべきだったといっている。



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