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「古文を気楽に読もう」の(13)、本居宣長(もとおりのりなが)の随筆『玉勝間(たまかつま)』です。

本居宣長(1730年~1801年、8代将軍吉宗~11代将軍家斉のとき)は江戸時代の国学者です。
伊勢の国(今の三重県)の松阪に生まれ、医者を業とするかたわら、賀茂真淵(かものまぶち)に入門した後、35年の歳月を費やして『古事記伝』を完成しました。
『古事記伝』は、当時ほとんど解読できなくなっていた奈良時代の歴史書『古事記』を綿密に解説した注釈書で、現在の人が『古事記』を読めるのは本居宣長の研究のおかげです。

その本居宣長の随筆が『玉勝間』です。
学問、芸術、人生に対する本居宣長の考えが綴られています。

今日とりあげるのは、「古(いにしえ)より後の世のまされること」です。

まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「作者の伝えたいことは何か=何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、読んでみましょう。


「古(いにしえ)よりも後の世のまされること」

古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。

その一つをいはむに、いにしへは、橘(たちばな)をならびなき物にしてめでつるを、
めでつる=珍重していた。

近き世には、みかんといふ物ありて、此(この)みかんにくらぶれば、橘は数にもあらずけおされたり。
けおされたり=圧倒された。

その外かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだいなどの、たぐひおほき中に、
かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだい=柑橘類(かんきつるい)の、柑子(こうじ)、柚子(ゆず)、九年母(くねんぼ)、橙(だいだい

蜜柑(みかん)ぞあじはひことにすぐれて、中にも橘によく似てこよなくまされる物なり。

此(この)一つにておしはかるべし。

或(あるひ)は古にはなくて、今はある物もおほく、いにしへはわろくて、今のはよきたぐひ多し。

これをもておもへば、今より後もまたいかにあらむ。

今に勝(まさ)れる物おほく出(い)で来べし。

今の心にて思へば、古はよろづに事たらずあかぬ事おほかりけむ。
事たらずあかぬ事=不十分で、満足できないこと。

されどその世には、さはおぼえずやありけん。

今より後また、物の多くよきがいでこん世には、今をもしか思ふべけれど、今の人、事たらずとおぼえぬが如し。
いでこん世=出て来るような時代。


読むときのヒント

古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。「昔よりも、後の時代のほうがまさっていることは、いろいろな物でも事でも多いものだ。」
「おほし」=現代仮名づかいだと「おおし」


その一つをいはむに
」は意志を表わす推量の助動詞。「~しよう」
いはむに言おうと思うのだが、

ならびなき=「ほかに比べるものがない」「最高である」

「たちばな」
日本に昔からある固有の柑橘類(かんきつるい)。直径は約5cm。みかんに比べると相当すっぱい。

みかん
みかんは、中国から肥後国(熊本県)に伝わり、15~16世紀に紀州(和歌山県)の有田に移植され、量産され始めました。江戸時代には江戸でも珍重されるようになりました。
さらに甘い種なしのうんしゅうみかん(温州みかん)が江戸時代後期から広まりました。

くらぶれば「比べたら」

たぐひおほき中に「同じ種類のものが多い中で」
たぐひ=読みは「たぐい」。「似たようなもの」、「同類のもの」。

あじはひ=「味わい」

こよなく=「格別に」

此(この)一つにておしはかるべし。=「この一つの例でも推測することができるだろう。」
「べし」=「できるだろう」
推量の助動詞。ここでは、可能の意味。


わろくて=「悪くて」

いかにあらむ=「どうだろうか」

出(い)で来べし=「出てくるだろう」
「べし」=「きっと~だろう」
推量の助動詞。ここでは、確信のある推量。

されどその世には、さはおぼえずやありけん。=「だが、その当時には、そうは思わなかったであろう。」
されど=けれども、しかし
=そう
おぼえず=思わなかった
ありけん=あろう、「けん」は「けむ」、過去の推量

いでこん=出てくるであろう

今をもしか思ふべけれど、今の人、事たらずとおぼえぬが如し。=「(未来の人が)今のことをそう(=不十分だと)思うかもしれないが、今の人が不足があるとは思わないのと同じだ。
しか=そう
べけれ
=推量の助動詞「べし」の已然形(いぜんけい)。
おぼえぬ
=おもわない、「ぬ」は打ち消しの助動詞「ず」の連体形。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

世の中は進歩するものだということを、みかんを例に述べています。

みかんを知るまでは、人はすっぱい橘を何よりも素晴らしいと思っていたのです。

このように、未来から過去を見たらばかばかしく思えるかもしれません。

しかし、見方をかえると、橘しか知らない時代の人は、橘で十分満足していたのです。

甘くおいしいみかんを知ったことが、はたして本当に幸せだったのかどうか・・・。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。


古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。

その一つをいはむに、いにしへは、橘(たちばな)を
(1)ならびなき物にしてめでつるを、
めでつる(漢字でかくと、「愛でつる」)=珍重していた。

近き世には、みかんといふ物ありて、此(この)みかんにくらぶれば、橘は数にもあらずけおされたり。
けおされたり=圧倒された。

その外かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだいなどの、たぐひおほき中に、
かうじ、ゆ、くねんぼ、だいだい=柑橘類(かんきつるい)の、柑子(こうじ)、柚子(ゆず)、九年母(くねんぼ)、橙(だいだい

蜜柑(みかん)ぞあじはひことにすぐれて、中にも橘によく似てこよなくまされる物なり。

(2)此(この)一つにておしはかるべし。

或(あるひ)は古にはなくて、今はある物もおほく、いにしへはわろくて、今のはよきたぐひ多し。

これをもておもへば、今より後もまたいかにあらむ。

今に勝(まさ)れる物おほく出(い)で来べし。

今の心にて思へば、古はよろづに事たらずあかぬ事おほかりけむ。
事たらずあかぬ事=不十分で、満足できないこと。

されど
(3)その世には、さはおぼえずやありけん

今より後また、物の多くよきがいでこん世には、
(4)今をもしか思ふべけれど、今の人、事たらずとおぼえぬが如し。
いでこん世=出て来るような時代。


問い一、「おほし」、「たぐひ」、「あじはひ」を現代かなづかいで書け。


解答 おおし たぐい あじわい


問い二、傍線(1)「ならびなき物」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 他の物と並べると見劣りする物
イ 比較する物がないほど優れた物
ウ めったに手に入らない貴重な物
エ ちょうど手ごろで食べやすい物



解答


問い三、傍線(2)「この一つにておしはかるべし」とは、「このこと一つからも推量することができよう」という意味だが、どんなことが推量できるというのか。古文中から一文を書き抜け。


解答 古(いにしえ)よりも、後の世のまされること、万(よろず)の物にも、事にもおほし。


問い四、傍線(3)「その世には、さはおぼえずやありけん」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア その時代には、さぞ不足や不満を感じていたであろう。
イ その時代には、不足や不満を感じていなかったであろう。
ウ その時代には、不足や不満を感じていたそうだ。
エ その時代には、不足や不満を感じていなかったそうだ。



解答


問い五、傍線(4)「今をもしか思ふべけれど」とは、「現代のこともそんなふうに思うだろうが」という意味であるが、どんなふうに思うというのか。思う内容を古文中から書き抜け。



解答 よろづに事たらずあかぬ事おほかりけむ


問い六、この文章の内容にあてはまるものを次のうちから二つ選び、記号で答えよ。
ア 古い時代のものごとは現代と比べるとまさっているものが多い。
イ みかんは、柑子や柚子などと比べるとまさっているが、橘の味覚にはおよばない。
ウ 古い時代には、みかんはなかったが、現代では橘よりももてはやされている。
エ 現代の人は、ものごとにあまり不足や不満を感じていない。
オ 現代人の目からすると、古い時代は暮らしやすいよい時代であった。



解答 ウ・エ


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「古文を気楽に読もう」の(12)、『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』より、「狐が妻に化けて家に来た話」です。

『今昔物語集』は、平安時代の後期、1120年以降の院政期に成立したといわれている説話集です。
作者・編者はわかっていません。
全三十一巻、1100以上の膨大な説話がおさめられています。
取り上げた説話の出典から、インド(天竺)・中国(震旦)、日本(本朝)の三部にわかれ、三部がさらに仏法部、世俗部の二部で構成されています。
各説話の冒頭が「今は昔」で始まるので、今昔物語集と名づけられました。
文学的な価値も高く、後世、芥川龍之介を初め、多くの文学者が今昔物語集を題材にした作品を発表しています。


まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか=作者の伝えたいことは何か」を理解する、の2点に留意して、読んでみましょう。


「狐が妻に化けて家に来た話」

今は昔、京にありける雑色(ぞうしき)男の妻、夕暮方に暗くなるほどに、要事ありて大路に出(いで)たりけるが、
雑色=走り使いを職業とする者  要事=用事
やや久しくかえり来ざりければ、夫、など遅くは来るならむと、あやしく思ひてゐたりけるほどに、妻入り来たり。

さてとばかりあるほどに、また同じ顔にして、有様つゆばかりも違ひたるところもなき妻入り来たり。



夫、 これを見るにあさましきこと限りなし。

何にまれ、一人は狐などにこそはあらめと思へども、いづれをまことの妻といふことを知らねば、思ひめぐらすに、
何にまれ=とにかく
後に入り来たる妻こそ、定めて狐にはあらめと思ひて、男、太刀(たち)を抜きて、後に入り来たりつる妻に走りかかりて、切らむとすれば、

その妻、「これはいかに、我をばかくはするぞ。」といひて泣けば、

また前に入り来たりつる妻を切らむとて走りかかれば、それもまた手をすりて泣きまどふ。


されば男、思ひわづらひて、とかく騒ぐほどに、

なほ前に入り来たりつる妻のあやしくおぼえければ、それを捕へていたるほどに、

その妻、あさましく臭き尿
(しと)をさとはせかけたりければ、
さとはせかけたり=さっとひっかけた
夫、臭さにたへずして、うちゆるしたりける際に、
うちゆるした=手をゆるめた
その妻、たちまちに狐になりて、戸の開きたりけるより大路に走り出て、こうこうと鳴きて逃げいにけり。
いにけり=去った
その時に男、ねたくくやしく思ひけれども、さらにかひなし。
ねたく=残念で  かひなし=しかたがない


これを思ふに、思ひ量りもなかりける男なりかし。

しばらく思ひめぐらして、二人の妻を捕へてしばり付けて置きたらましかば、つひにはあらはれなまし。
…ましかば、~まし=「もし…だったら、~であったろうに」
いとくちをしく逃がしたるなり。
 (『今昔物語集』)


読むときのヒント

夫、など遅くは来るならむと、あやしく思ひてゐたりけるほどに、
「など~ならむ」=なぜ~なのだろうか、「なぜ遅くまで帰ってこないのだろうか」
「あやしく思ひて」=不思議に思って

夫、 これを見るにあさましきこと限りなし。
あさましき=形容詞「あさまし=(異様な出来事に遭遇して)驚きあきれること」の連体形。

一人は狐などにこそはあらめ
=一人は狐のたぐいであろう

後に入り来たる妻こそ、定めて狐にはあらめ
=後に入ってきた妻のほうが、きっと狐であろう

「これはいかに、我をばかくはするぞ。」
=これはどういうことですか、なぜ私にそんなことをなさるのですか。

あさましく臭き尿(しと)
=異様にくさいおしっこを

さらにかひなし。
=もう、どうしようもない。

思ひ量りもなかりける男なりかし。
=分別のない男であることだ。

いとくちをしく
=大変、残念なことに


文の主題(テーマ)を読み取ろう

昔の人は、妖怪や物の怪(もののけ)の存在を本気で信じていました。また、狐や狸などの動物が化けて人間に悪さをすることも当たり前にあることだと思われていました。

この話では、狐が女房に化けて家に帰って来ました。

驚き騒ぐ男の様子、臭い尿を男にかけてそのすきにまんまと逃げる狐の姿が、おもしろく表現されています。

また、
実際に、まったく見分けのつかないそっくりな家族が2人、突然目の前に現われたとき、「思ひ量り」=「冷静な判断力」を持てるでしょうか。
私には、
最後の教訓も、とってつけたような説教臭さがあっておもしろく感じられます。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。


今は昔、京にありける雑色男の妻、夕暮方に暗くなるほどに、要事ありて大路に出たりけるが、

やや久しくかえり来ざりければ、夫、など遅くは来るならむと、あやしく思ひてゐたりけるほどに、妻入り来たり。さてとばかりあるほどに、また同じ顔にして、有様
(A)つゆばかりも違ひたるところもなき妻入り来たり。

夫、これを見るに
(1)あさましきこと限りなし。何にまれ、一人は狐などにこそは(B)あらめと思へども、いつれをまことの妻といふことを知らねば、思ひめぐらすに、後に入り来たる妻こそ、定めて狐にはあらめと思ひて、男、太刀を抜きて、後に入り来たりつる妻に走りかかりて、切らむとすれば、その妻、「これはいかに、我をば(2)かくはするぞ。」といひて泣けば、また前に入り来たりつる妻を切らむとて走りかかれば、(3)それもまた手をすりて泣きまどふ。
されば男、
(4)思ひ
(a)わづらひて、とかく騒ぐほどに、なほ前に入り来たりつる妻のあやしく(C)おぼえければ、それを捕へていたるほどに、その妻、あさましく臭き尿をさとはせかけたりければ、夫、臭さにたへずして、うちゆるしたりける際に、その妻、たちまちに狐になりて、戸の開きたりけるより大路に走り出て、こうこうと鳴きて逃げいにけり。その時に男、ねたくくやしく思ひけれども、さらに(b)かひなし

これを思ふに、思ひ量りもなかりける男なりかし。しばらく思ひめぐらして、二人の妻を捕へてしばり付けて置きたらましかば、つひには
(5)あらはれなまし。いとくちをしく逃がしたるなり。
 (『今昔物語集』)


雑色:走り使いをする者。
要事:用事。
何にまれ:とにかく。
さとはせかけたり:さっとひっかけた。
うちゆるした:手をゆるめた。
いにけり:去った。
ねたく:残念で。
かひなし:しかたがない。
ましかば:あとの「まし」と呼応して、「~ましかば…まし」の形で、「もし~だったら…であったろうに」。



問一 傍線a「わづらひて」・b「かひなし」をそれぞれ現代かなづかいで書け。
a
b

(解答)
a わずらいて
b かいなし


問二 線A「つゆばかりも」・B「あらめ」・C「おぼえければ」の意味として最も適当なものを次のうちから選び、それぞれ記号で答えよ。
A
ア 少しも
イ 少しは
ウ 少しなら
エ 少しでも

B
ア あるだろう
イ あってほしい
ウ あるだろうか
エ ありはしない

C
ア 記憶したので
イ 思われたので
ウ 驚いたので
エ 声をあげたので

(解答)
A ア
B ア
C イ


問三 傍線(1)「あさましきこと限りなし」とは、夫が大変驚いたという意味だが、夫はなぜ驚いたのか。現代語で答えよ。

(解答)
同じ顔で、様子もまったく違わない妻が入ってきたから。


問四 傍線(2)「かくはするぞ」は「このようなことをするのですか」という意味だが、具体的にどのようなことをするというのか。現代語で答えよ。

(解答)
太刀を抜いて、後に入ってきた妻に走りよって、刀で切ろうとしたこと


問五 傍線(3)「それ」の指す言葉を古文中から書き抜け。

(解答)
前に入り来たりつる妻


問六 傍線(4)「思ひわづらひて」とあるが、夫はなぜ「思ひわづら」ったのか。最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 泣きじゃくる二人の妻があわれになったから。
イ どちらが本当の妻か見分けがつかないから。
ウ 狐に化かされて正気を失ったから。
エ 妻にからかわれている自分が情けなくなったから。

(解答)



問七 傍線(5)「あらはれなまし」は「現れただろうに」という意味だが、何が現れただろうというのか。最も適当なものを次のうちから選び、記号で答えよ。
ア 夫に加勢する人
イ 本当の妻
ウ よい知恵
工 狐の正体

(解答)



問八 古文中から擬声語を一語書き抜け。

(解答)
こうこう


問九 この文章の筆者は、夫をどのような人物と考えているか。それがわかる一文を書き抜け。


(解答)
これを思ふに、思ひ量りもなかりける男なりかし。


問十 この文章の筆者は、夫はどのように行動すべきだったといっているか。現代語で答えよ。

(解答)
落ち着いて考えて、二人の妻の両方を捕えてしばりつけておくべきだったといっている。



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平成23年度より始まった文理学科入試、どのような問題が出題されるのか興味津々だったのですが、今までの問題を少し難しくした感じで、出題傾向は以前と変わりませんでした。

平成23年度国語の問い2です。まず、入試問題だと気負わずに、(1)声に出して読む、(2)「何がおもしろいのか」、「何を言いたいのか」を読み取る、の2点に留意して、気楽に読んでみましょう。


二 梅をたづね、花を見るなどは、たれもたれもいふなるに、かしこの松のめづらしきを見ばや、ここの竹に、日をくらしてなどいふ人の、たまさかにもなきが、うらめしきなり。

さるはとこしなへにみどりふかく、所をわかで多かるものゆゑ、よしと見つつ、めづらしげなければなるべし。

たれがしが庭のおもしろうなどきこゆるに、松竹のなしときけば、そのあるじかたらまほしとも覚えぬよし、いふ人もあり。



実際の問題は、中学生が理解しにくい語については、本文の横に次のような訳がついていました。

梅をたづね、花(桜)を見るなどは、たれもたれもいふなるに(だれもがみな言うようだが)、かしこの松のめづらしきを見ばや(見たい)、ここの竹に、日をくらしてなどいふ人の、たまさかにもなき(めったにない) が、うらめしきなり。

さるは
(それというのは)とこしなへに(常にいつまでも)みどりふかく、所をわかで(どんな所にも)多かるものゆゑ、よしと見つつ、めづらしげなければなるべし。

たれがしが庭のおもしろう
(だれそれの庭が趣深い)などきこゆるに、松竹のなしときけば、そのあるじかたらまほしとも覚えぬよし、いふ人もあり(というようなことを言う人もいる)

注釈の現代語訳を参考にすれば、およその意味と作者の主張を読み取ることは容易なはずです。


注釈が書かれていない語で、知っていたらよい語としては次のようなものがあります。

ワンポイント・レッスン

かしこ」・・・「あそこ、あちら」

うらめしき」・・・「残念だ、悔しい」
形容詞「うらめし」の連用形。

かたらまほし」・・・「かたる(親しくする)」+「まほし(~したい」=「親しくしたい」

覚ゆ」・・・「思われる」


文の主題(テーマ)を読み取ろう

梅や桜を誉める人は多いのに、松や竹を愛する人が少ないことを作者は残念に思っているのです。
いつも緑で、どこにでもあるのがその原因ではないかと言っています。
しかし、松や竹がない庭の持ち主とは趣味が合わないと述べています。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

梅をたづね、花(桜)を見るなどは、たれもたれもいふなるに(だれもがみな言うようだが)、かしこの松のめづらしきを見ばや(見たい)、(1)ここの竹に、日をくらしてなどいふ人の、たまさかにもなき(めったにない) が、うらめしきなり。

さるは
(それというのは)(2)とこしなへに(常にいつまでも)みどりふかく、所をわかで(どんな所にも)多かるものゆゑ、よしと見つつ、( (3) )なければなるべし。

たれがしが庭のおもしろう
(だれそれの庭が趣深い)などきこゆるに、松竹のなしときけば、(4)そのあるじかたらまほしとも覚えぬよし、いふ人もあり(というようなことを言う人もいる)


問い一
(1)ここの竹に、日をくらしての意味として次のうち最も適しているものを一つ選び、記号を書きなさい。
ア 毎日ここの竹を見ていたい
イ ここの竹で日の光が暗くなる
ウ 一日中ここの竹を見ていよう
エ ここの竹の売って暮らそう



(解答)ウ

吉田兼好『徒然草』の冒頭、「つれづれなるまゝに、日暮らし(=一日中)、硯(すずり)に向ひて」を知っていたら、簡単です。


問い二
(2)とこしなへにみどりふかく、所をわかで多かるものとあるが、これは何のことをこのように述べているのか。本文中のことばを使って書きなさい。



(解答)松と竹のこと
(教育委員会発表の模範解答)松竹

問い三
次のうち、( (3) )に入れるのに最も適していることばはどれか。一つ選び、記号を書きなさい。
ア あぶなげ
イ かなしげ
ウ うらめしげ
エ めづらしげ


(解答)エ


問い四
(4)そのあるじかたらまほしとも覚えぬは、ここでは「その家の主人とは語り合いたいとも思われない」という意味であるが、このように言う人の庭に対する考えを次のようにまとめた。(   )に入る内容を、本文中から読み取って現代のことばで15字程度で書きなさい。
だれもがみな梅や桜を見たがるが、庭は(   )という考え。



(解答)松と竹があってこそ趣深い(12字)
(教育委員会発表の模範解答)松竹がないと趣深いとは言えない(15字)

この問いだと、本文中の注釈にのっていた「趣深い」を活用するのがコツです。


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「古文を気楽に読もう」の(10)、今日は『十訓抄(じっきんしょう)』です。

十訓抄は鎌倉時代説話集です。わが国や中国の説話(民話・伝説・噂話など人々の間に語り伝えられた話)280ほどがおさめられています。
若い人の教育を目的とし、十訓=十個の教訓(「人のためにはたらかないといけない」、「ごう慢であってはいけない」、「友だちを選ばないといけない」、など)を説話で説いたものです。

まず、本文を、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか=作者の伝えたいことは何か」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。


本文

楊梅大納言顕雅卿(やまもものだいなごんあきまさきょう)は、若くよりいみじく言失(ごんしつ)をぞしたまひける。

神無月(かんなづき)のころ、ある宮ばらに参りて、御簾(みす)の外にて女房たちと物語りせられけるに、

時雨のさとしければ、供なる雑色をよびて、「車の降るに時雨さし入れよ」とのたまひけるを、

「車軸とかやにや。恐ろしや」とて、御簾の内笑ひあはれけり。

さてある女房の「御いひたがへ常にありと聞こゆれば、実(まこと)にや。御祈りのあるぞや」といはれければ、

「そのために三尺のねずみを作り供養せむと思ひ侍(はべ)る」といはれたりける。

折節(おりふし)、ねずみの御簾のきはを走り通りけるを見て、観音に思ひまがひてのたまひけるなり。

「時雨さし入れよ」にはまさりておかしかりけり。



(注)
車軸…車の心棒のこと。平安時代の貴族は牛車で移動した。また、当時、どしゃぶりの雨のことを、その強い勢いから「車軸を流す」と表現した。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

楊梅大納言顕雅卿(やまもものだいなごんあきまさきょう)は、若いときからよく「言失(ごんしつ)」をする人でした。

「言失」とは何か(漢字から推測してみてください)、そして、どんな「言失」をしたのかを読み取らないといけません。

「車の降るに時雨さし入れよ」・・・「車が降るから時雨をさしいれなさい」のおかしさがわかりますか。

「そのために三尺のねずみを作り供養せむと思ひ侍(はべ)る」・・・「『言失』をしなくなるように三尺のねずみを作って供養(祈ること)しようと思っています」のおかしさがわかりますか。


ワンポイント・レッスン

いみじく」・・・「とても、ひどく」。
形容詞「いみじ」の連用形です。

宮ばら」・・・「皇子、皇女」。
「宮」は、皇子、皇女などの皇族の敬称。

御簾(みす)」・・・貴人の邸宅にかけられたすだれ。

時雨(しぐれ)」・・・秋から冬にかけて降る断続的な冷たい雨。

さとしければ」・・・「さっと降ってきたので」。

のたまひける」・・・「おっしゃった」。
「のたまふ」は、「言ふ」の尊敬語。

御いいたがへ」・・・「いいたがえ」=「言失」です。

きは」・・・「近く、そば」。

思ひまがひて」・・・「思い違って」。

まさりて」・・・「~よりはもっと」。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

楊梅大納言顕雅卿(やまもものだいなごんあきまさきょう)は、若くより(A)いみじく言失(ごんしつ)をぞ(2)(ア)したまひける

(3)神無月(かんなづき)のころ、ある宮ばらに参りて、御簾(みす)の外にて女房たちと物語りせられけるに、

時雨のさとしければ、供なる雑色をよびて、「(4)車の降るに時雨さし入れよ」とのたまひけるを、

「車軸とかやにや。恐ろしや」とて、御簾の内笑ひあはれけり。

さてある女房の「御いひたがへ常にありと聞こゆれば、実(まこと)にや。御祈りのあるぞや」といはれければ、

「そのために(5)三尺のねずみを作り供養せむと思ひ侍(はべ)る」と
(イ)いはれたりける

(B)折節(おりふし)、ねずみの御簾のきはを走り通りけるを見て、観音に思ひまがひてのたまひけるなり。

「時雨さし入れよ」にはまさりておかしかりけり。



問い一

傍線(ア)「したまひける」、(イ)「いはれたりける」をそれぞれ現代かなづかいで書け。

(解答)
(ア)したまひける→したまいける
(イ)いはれたりける→いわれたりける

問い二

傍線(A)「いみじく」、(B)「折節」を現代語に訳せ。

(解答)
(A)いみじく→ひどく
(B)折節→ちょうどそのとき

問い三

傍線(3)「神無月」は陰暦の何月か。

(解答)
10月

月については、こちらを参照してください。

問い四

傍線(四)「車の降るに時雨さし入れよ」とあるが、本当は大納言はどう言うつもりだったのか。

(解答)
「時雨の降るに車さし入れよ」と言うつもりだった。

問い五

傍線(五)「三尺のねずみを作り」とあるが、本当は大納言は何を作るというつもりだったのか。

(解答)
三尺の観音を作るというつもりだった。

観音・・・観音さまの仏像。

問い六

文中の「言失をぞしたまひける」とは何をすることか。十字以内で答えよ。

(解答)
「言いまちがいをすること。」だと、十字をこえてしまいます。
「言いまちがえること。」で句読点を含めて十字です。






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「公立高校入試で出題された古文を気楽に読もう」の(9)、今日取り上げるのは橘成季(たちばなのなりすえ)『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』です。

鎌倉時代の作品である『古今著聞集』は、平安時代の『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』、鎌倉時代の『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』とならんで、三大説話集の一つです。

説話集・・・人々の間に語り伝えられた話(民話・伝説・噂話など)を説話といい、説話を集めたものを説話集といいます。

古今著聞集・・・鎌倉時代、1254年に成立。
3分の1が鎌倉時代、3分の2が平安時代の説話で構成されています。承久の乱から30数年、政治の実権を武士にゆずった貴族の、華やかだった平安時代を懐かしむ気持ちが成立の背景にあると言われています。平安貴族にまつわる話を、事実にもとづいて収集したものが中心です。30編に分かれ、整理の行き届いた構成になっています。

橘成季・・・詳細は不明ですが、下級貴族でありながら、文学、音楽、美術の才能にあふれた才人であったようです。


では、本文を、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか=作者の伝えたいことは何か」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。


本文

伊予の入道は、幼くより絵をよくかきはべりけり。

幼少の時、父の家の中門の廊の壁に、かはらけのわれにて、不動の立ちたまへるをかきたりけるを、

客人
(まらうど)、これを見て、「たがかきて候ふにか」と、おどろきたる気色にて問ひければ、

あるじうち笑ひて、「これはまことしきもののかきたるには候はず。

愚息の小童
(こわらは)がかきて候ふ。」と言はれければ、

いよいよ尋ねて、「然る
(しかる)べき天骨とはこれを申し候ふぞ。

この事、制したまふ事あるまじく候ふ。」となん言ひける。

げにもよく絵見知りたる人なるべし。



(注)
伊予の入道…絵師の藤原隆親。
かはらけ…素焼きの土器。
不動…仏教守護の明王(みょうおう)。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

幼少時より画才のあった伊予の入道の逸話を紹介していますが、作者の真意は「げにもよく絵見知りたる人」を誉めるところにあります。

子どもの絵の才能を見抜いた客人の鑑識眼の確かさも誉めているのです。

制したまふ事あるまじく候ふ」にこめられた、すぐれた才能をいつくしむ心情を読み取るべきです。

ひょっとすると、この「客人」はすぐれた芸術家であった橘成季本人かもしれないと想像させる文章です。


ワンポイント・レッスン

かきはべりけり」・・・「おかきになりました」。
「はべり」は丁寧語です。

立ちたまへる」・・・「立たれている」。
「たまふ」は尊敬語です。

たがかきて候ふにか」・・・「誰がかいたのですか」。
「た」=「誰」。

気色」・・・「けしき」と読みます。「表情」、「態度」、「様子」。

まことしきもの」・・・「本格的な絵師」。
「まことし」は、「本格的な」、「本式の」の意味。

愚息の小童(こわらは)」・・・「私の息子である子ども」。

然る(しかる)べき」・・・「すばらしい」。

天骨」・・・「生まれつきの才能」。

制したまふ」・・・「お止めになる」。
「制す」は「制限する」、「止める」です。

あるまじ」・・・「あってはならない」。

げにも」・・・「まことに」。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

伊予の入道は、幼くより絵をよくかきはべりけり。

幼少の時、父の家の中門の廊の壁に、かはらけのわれにて、不動の立ちたまへるをかきたりけるを、

客人
(まらうど)、これを見て、「たがかきて候ふにか」と、(1)おどろきたる気色にて問ひければ、

あるじうち笑ひて、「これはまことしきもののかきたるには候はず。

愚息の小童
(こわらは)がかきて候ふ。」と(A)言はれければ

いよいよ尋ねて、「然る
(しかる)べき天骨とはこれを申し候ふぞ。

この事、
(2)制したまふ事あるまじく候ふ。」となん(B)言ひける

げにも
(3)よく絵見知りたる人なるべし。



1、傍線A「言はれければ」、B「言ひける」の主語はそれぞれだれか。文章中から抜き出して書け。

(解答)
A、あるじ
B、客人


2、傍線(1)「おどろきたる気色」とあるが、なぜおどろいたのか。その理由を句読点を含めて30字以内で書け。

(解答)
「壁に土器のかけらで描かれた不動の絵がすばらしい絵だったから。」(30字)


3、傍線(2)「制したまふ事あるまじく候ふ」とはどういう意味か。最も適切なものを次から選び、記号で答えよ。
ア お許しにならないことです
イ お決めにならないことです
ウ おやめにならないことです
エ お止めにならないことです


(解答)



4、傍線(3)「
よく絵見知りたる人」とは誰のことか。

(解答)
客人


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「気楽に公立高校入試で出題された古文を読もう」の(8)です。

今日の文章は、井原西鶴『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』です。

井原西鶴は、俳諧の松尾芭蕉、人形浄瑠璃の台本を書いた近松門左衛門と並んで、江戸時代前期の元禄文化を代表する浮世草子の作者です。
西鶴の作品は好色物・武家物・町人物に分類されますが、町人物の代表作が『日本永代蔵』と『世間胸算用(せけんむねさんよう、せけんむなざんよう)』です。勃興してきた町人の生活をいきいきと描写して庶民から支持されました。

(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。


本文

ある時、夜更(ふ)けて樋口屋の門をたたきて、酢を買ひにくる人ありけり。

中戸を奥へは幽(かす)かに聞こえける。

下男目を覚まし、「何程(なにほど)がの」と云ふ。

「むつかしながら一文(もん)がの」と云ふ。

空寝入りして、そののち返事をせねば、ぜひなく帰りぬ。

夜明けて亭主は、かの男よび付けて、何の用もなきに「門口三尺ほれ」と云ふ。


御意(ぎょい)に任せ九三郎、もろ肌ぬぎて鍬を取り、堅地に気をつくし、身汗水なして、やうやう掘りける。

その深さ三尺といふ時、「銭があるはづ、いまだ出ぬか」と云ふ。

「小石・貝殻より外に何も見えませぬ」と申す。

「それ程にしても銭が一文ない事、よく心得て、かさねては一文商も大事にすべし。」


(注)
中戸…店と居間を仕切る戸。
何程がの…どれほどですか。
文…通貨の単位。現代の貨幣価値で10円程度。
御意に任せて…ご命令に従って。
尺…長さの単位。一尺は約30.3cm。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

町人の商業道徳を説いた文章です。

些少な金額の買い物をしに来た客を下男が相手にせずに帰してしまいます。
店の主人が下男の行いを諭(さと)すのに、店先のかたい土地に1mほどの穴を掘らせます。苦労して穴を掘る下男に「銭が埋まっているはず。まだ出ぬか。」と聞く主人。
当然、小石や貝殻しか出てきません。「それだけ苦労しても銭は一文も出てこないことを心得て、これからは一文の商いも大事にせよ」と主人は叱ります。

「金額の多少で客を差別するな、誠意を尽くせ。」という、現代にも通じる商人としての倫理を教える作品です。


ワンポイント・レッスン

中戸を奥へは」・・・「中戸をへだてて奥には」。
奥にいる主人に、客が戸をたたく音がかすかに聞こえたのです(だから、翌朝、下男を叱ることができた)。

むつかし」・・・「わずらわしい」、「面倒である」。
この語が「むづかし」になり、「理解しにくい、困難だ」の意味になりました。

ぜひなく」・・・「仕方なく」、「やむをえず」。

御意」・・・(身分が上の人の)「考え」、「意向」。

気をつくし」・・・「精をだして」、「必死で」。

やうやう」・・・「やっとのことで」。
枕草子の「やうやう」=「だんだん」と違って、ここでは「やっとのことで」の意味です。

かさねては」・・・「これからは」。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

ある時、夜更(ふ)けて樋口屋の門をたたきて、酢を買ひにくる人ありけり。

中戸を奥へは幽(かす)かに聞こえける。

下男目を覚まし、「何程(なにほど)がの」と云ふ。

「(1)むつかしながら一文(もん)がの」と云ふ。

空寝入りして、そののち返事をせねば、ぜひなく帰りぬ。

夜明けて亭主は、かの男よび付けて、(2)何の用もなきに「門口三尺ほれ」と云ふ。


御意(ぎょい)に任せ九三郎、もろ肌ぬぎて鍬を取り、堅地に気をつくし、身汗水なして、(3)やうやう掘りける。

その深さ三尺といふ時、「( (4) )があるはづ、いまだ出ぬか」と云ふ。

「小石・貝殻より外に何も見えませぬ」と申す。

「それ程にしても銭が一文ない事、よく心得て、
( (5) )

(注)
中戸…店と居間を仕切る戸。
何程がの…どれほどですか。
文…通貨の単位。現代の貨幣価値で10円程度。
御意に任せて…ご命令に従って。
尺…長さの単位。一尺は約30.3cm。


1、傍線(1)「むつかしながら」の意味として最も適切なものを、次から選び、記号で答えよ。

ア 苦しいでしょうが
イ めずらしいでしょうが
ウ こわいでしょうが
エ ごめんどうでしょうが


(解答)エ

現代語とは意味が違うから問われます。
前後の文章を参考に、一番ふさわしい意味を常識で選ぶべきです。

2、傍線(2)「何の用もなきに『門口三尺ほれ』」とあるが、だれがだれのどういう行為に対してそうさせたのか。「酢」という言葉を使い、「…が…の…に対して」の形で、二十八字以内(句読点を含む)で書け。

(解答)「亭主下男一文で酢を買いに来た客を帰した行為に対して(27字)」

3、傍線(3)「やうやう」の意味を次から選び、記号で答えよ。

ア いろいろ
イ ゆっくり
ウ ようやく
エ かるがる


(解答)ウ

4、( (4) )に入る言葉として最も適切なものを、文中から抜き出し、一字で書け。


(解答)銭

5、( (5) )に入る表現を次から選び、記号で答えよ。

ア かさねては酢の商いも大事にすべし。
イ かさねては一文商も大事にすべし。
ウ かさねては夜更けの商も大事にすべし。
エ かさねては夜明けの商も大事にすべし。


(解答)イ



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「気楽に公立高校入試で出題された古文を読もう」の(7)です。

今日の文章の出典は、松平定信の『花月草紙(かげつそうし)』です。

松平定信は社会科でおなじみですね。
江戸幕府の老中で、寛政の改革をおこなった人です。

徳川吉宗の孫として生まれ、陸奥国の白河藩主となります。田沼意次の失脚後、11代将軍家斉のとき老中となり、1793年に辞職するまで寛政の改革を断行します。
辞職後、自分の体験や感想を1796~1803年にかけてつづった随筆が『花月草紙』です。

(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。


本文

ものを引き延ばして、時失ふ者ありけり。

人の早苗
(さなえ)植うるころ、種ほどこしてけり。

葉月のころ、穂の出
(い)でたるに、嵐(あらし)吹きてければ、「花散りぬ」と嘆くを、

あまりにもの急ぎし給へばこそあれ。

わが稲は、この頃植ゑにしかば、嵐のわざはひにもあひはべらずと、

人にたかぶりけり。

人の刈り収
(おさ)むるころ、少しばかり穂の見えたるが、はや霜の置きてければ、みな枯れぬ。


「ことしはいと早う霜の置きしなり」とて、年をのみ罪していまだ悟らざりしとなり。


(注)早苗・・・稲の苗
葉月・・・旧暦の8月
年をのみ罪して・・・その年の天候の不順のせいにして


文の主題(テーマ)を読み取ろう

しないといけない事を先のばしにして、時機(ものごとのチャンス)を失う人がいるということを、愚かな人のおこないを通して指摘しています。

作者の言いたいことの中心は、冒頭の「ものを引き延ばして、時失ふ者ありけり。」です。

愚かな人は、時機をのがすだけでなく、8月、稲穂が出た頃に嵐がきて心配して嘆く人を見おろして、「あまりにもものごとを急ぐからです。自分は植えたばかりだから嵐の災いにも会わずにすみました。」と馬鹿にします。

当然、人が刈り取る頃にやっと穂が出てきますが、はやくも霜が降りたので自分の稲はみな枯れてしまいます。
それでも愚かな人は悟りません。「今年はとても早く霜が降りたものだ。」と、その年の天候不順のせいにして懲りないままです。

物事を先のばしにしてチャンスをのがす、自分の無知を知らずに人を馬鹿にする、失敗しても自然のせいにして反省することがない、以上3つの過ちをおかして恥じない人の行状を記述することで世の人の戒めとしています。


ワンポイント・レッスン

古文では、格助詞「の」がしばしば主語を表わします。
「が」と言い換えられる「の」は、主語を表わす「の」です。

本文中の、「
早苗(さなえ)植うるころ」、「出(い)でたるに」、「刈り収(おさ)むるころ」、「見えたるが」、「置きてければ」、「置きしなり」の「の」が、「が」と言い換えられる、主語を表わす「の」です。

種ほどこしてけり」・・・「種をまいた」

葉月」・・・旧暦の8月ですが、だいたい旧暦の8月は現代の暦(新暦)では9月にあたります。9月は台風のシーズンですから嵐がきたのでしょう。

花散りぬ」・・・「花が散ってしまった」

この頃植ゑにしかば」・・・「最近植えたので」

あひはべらず」・・・「あいませんでした」
「はべらず」は「はべり」の否定形。「はべり」は「ます」「でございます」の意味で丁寧な表現のときに使います。

霜の置きてければ」・・・「霜が降りたので」


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

ものを引き延ばして、時失ふ者ありけり。

人の早苗
(さなえ)植うるころ、種ほどこしてけり。

葉月のころ、穂の出
(い)でたるに、嵐(あらし)吹きてければ、「(ア)花散りぬ」と嘆くを、

あまりにもの急ぎし給へばこそあれ。

わが稲は、
(イ)この頃植ゑにしかば、嵐の(ウ)わざはひにもあひはべらずと、

(エ)人にたかぶりけり

人の刈り収
(おさ)むるころ、少しばかり穂の見えたるが、はや霜の置きてければ、みな枯れぬ。


「ことしはいと早う霜の置きしなり」とて、年をのみ罪して
(オ)いまだ悟らざりしとなり


(注)早苗・・・稲の苗
葉月・・・旧暦の8月
年をのみ罪して・・・その年の天候の不順のせいにして


1、文章中の会話の中で、会話を示す「」をつけていないところが1か所ある。その部分の始めと終わりの四字をそれぞれ抜き出して答えよ。(句読点は含まない。)

会話部分は、「と」の前までだと知っていたら見つかりやすくなります。
「・・・・・・」の形になっています。


(解答)あまりに~はべらず

2、傍線(ア)「花散りぬ」とあるが、散ったのは何の花であるかを答えよ。


(解答)稲の花

3、傍線(イ)「このごろ」とあるが、いつごろのことか。本文中の語句を抜き出して答えよ。

(解答)葉月のころ

4、傍線(ウ)「わざはひ」を現代かなづかいに改めよ。

(解答)わざわい

5、傍線(エ)「人にたかぶりけり」とあるが、これはどういう意味か。最も適切なものを次から選び、記号で答えよ。
(あ)人に対して興奮したようすを見せた。
(い)人に対して恥ずかしそうな表情を見せた。
(う)人に対して批判的なそぶりを見せた。
(え)人に対して得意そうな態度を見せた。


(解答)(え)

6、傍線(オ)「いまだ悟らざりしとなり」とあるが、どういうことを悟らなかったのか。本文中から適切な部分を十字以上十五字以内で「こと」に続くように抜き出せ。(句読点を含む。)

(解答)ものを引き延ばして、時失ふ(こと)



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今日取り上げる文章は、江戸時代の前期1660年頃に成立した『浮世物語』からの一節です。浮世坊というお坊さんが諸国を巡遊して見聞した笑い話や教訓を紹介する体裁をとっています。

作者は浅井了意
浄土真宗の僧であり、仮名草子の作家でした。『浮世物語』などの仮名草子は井原西鶴ら後世の作家に大きな影響を与えました。
浅井了意の作品「東海道名所記」の「いとおしき子には旅をさせよという事あり。」から、格言「可愛い子には旅をさせよ。」が生まれました。


意味をさぐりながら、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。

本文

うぐひす、いとうつくしき巣を作る。

鳩、「これを習はん。」と思ひて、うぐひすに近づきて、巣のつくりやうを見る。

うぐひす、竹ぎれ、柴の折れを敷きわたして、その上に巣をかくるが、それまでも見とどけず、

竹、柴をわたしたるばかりを見て、「もはや心得たり。」と思ひて、

おのれ巣を作る時は、木の枝に柴の折れ四、五本をわたし、その上に木の葉を敷きて卵を産む。

卵、柴の折れのあひだよりもれ落つ。

伝へられたる奥義(おうぎ)をわきまへずして、

ただ見たる、聞きたるにまかせて、よくも知らぬことなれども、すべて知りたる顔したるを、鳩の巣にたとへたり。



(注)奥義・・・その道やそのわざでの、いちばん奥深くにあるひけつ。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

まず具体的な逸話があって最後に教訓でまとめる、古文の一つのパターンを踏襲した文章です。

うぐいすは竹のきれはしや柴(小さな雑木)の折れたものを敷いた上に本来の巣を作っていたのに、鳩は最後まで見届けずに、うぐいすが竹や柴を置いたところまで見て、「もう、わかった」と早合点をしてしまいます。
自分がまねをして巣を作るときは、木の枝に柴を四・五本置いただけで、その上に木の葉をしいて卵を産みます。
当然、産んだ卵は柴の間からもれ落ちてしまいます。

文章の主題は、最後の、「伝へられたる奥義(おうぎ)をわきまへずして、ただ見たる、聞きたるにまかせて、よくも知らぬことなれども、すべて知りたる顔したる」は愚かなおこないだというところにあります。

「伝えられた奥義を理解せずに、ただ自分が見た、聞いたことだけを根拠に、本当は理解できていないことであるのに、すべてを知ったような顔をする」のは愚かなことだという作者の意見を読み取ることができれば、この文章を正しく読解できたことになります。


ワンポイント・レッスン

古文では、主語を示す助詞の「が」や、目的語を表わす助詞の「を」などをしばしば省略します。
参考までに省略されている助詞を補うと全文は以下のようになります。

「うぐひす、いとうつくしき巣を作る。
、「これを習はん。」と思ひて、うぐひすに近づきて、巣のつくりやうを見る。
うぐひす、竹ぎれ、柴の折れを敷きわたして、その上に巣をかくるが、それまでも見とどけず、竹、柴をわたしたるばかりを見て、「もはや心得たり。」と思ひて、おのれ巣を作る時は、木の枝に柴の折れ四、五本をわたし、その上に木の葉を敷きて卵を産む。
、柴の折れのあひだよりもれ落つ。
伝へられたる奥義(おうぎ)をわきまへずして、ただ見たる、聞きたるにまかせて、よくも知らぬことなれども、すべて知りたる顔したるを、鳩の巣にたとへたり。」

習わん」・・・「習おう」。
「ん」は、「~しよう」、「~するつもりだ」という意味の、意志を表わす助動詞の「む」が音便化して「ん」になったものです。

巣のつくりやう」・・・「巣の作り方」。
「やう」の発音は「よう」です。漢字で書くと「様」。「~の仕方」、「~の方法」という意味です。

もはや心得たり」・・・「もうわかった」。
「たり」は完了の助動詞で、「~した」の意味です。

おのれ」・・・「自分が」。

よくも知らぬことなれども」・・・「よく知らないことであるのに」。



せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

うぐひす、いとうつくしき巣を作る。

鳩、「これを(ア)習はん。」と思ひて、うぐひすに近づきて、巣のつくりやうを見る。

うぐひす、竹ぎれ、柴の折れを敷きわたして、その上に巣をかくるが、それまでも見とどけず、

竹、柴を(イ)わたしたるばかりを見て、「(    ウ    )。」と思ひて、

(エ)おのれ巣を作る時は、木の枝に柴の折れ四、五本をわたし、その上に木の葉を敷きて卵を産む。

卵、柴の折れのあひだよりもれ落つ。

伝へられたる奥義(おうぎ)をわきまへずして、

ただ見たる、聞きたるにまかせて、よくも知らぬことなれども、すべて知りたる顔したるを、(オ)鳩の巣にたとへたり



(注)奥義・・・その道やそのわざでの、いちばん奥深くにあるひけつ。


問い

1、傍線(ア)「習わん」を口語訳せよ。

(解答)
習おう

2、傍線(イ)「わたしたる」の主語を書け。

(解答)
うぐひす

3、(    ウ    )の部分に入れるのに最も適当なものを、(あ)~(お)から一つ選び、記号で答えよ。

(あ)いと口惜し
(い)よくも知らず
(う)もはや心得たり
(え)つゆ知らず
(お)いみじう寂し

(解答)
(う)もはや心得たり

4、傍線部(エ)「おのれ」は何をさしているか。文中の語で答えよ。


(解答)


5、傍線部(オ)「鳩の巣にたとへたり」とあるが、この文章で、どんなことを「鳩の巣」にたとえているか。最も適当なものを次の(あ)~(お)から一つ選び、記号で答えよ。

(あ)伝えられた奥義をまったく参考にせず、自分の経験を踏まえてものごとを判断すること。

(い)伝えられた奥義を十分に理解せず、よくは知らないことなのに知ったかぶりをすること。

(う)伝えられてきた奥義を知らず知らずのうちに理解し、ついにはその道をきわめてしまうこと。

(え)伝えられてきた奥義を無視してしまうので、あらゆることが理解できなくなってしまうこと。

(お)伝えられてきた奥義を軽く受け流していたのに、ものごとの本質までも理解してしまうこと。


(解答)
(い)


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「公立高校入試で出題された古文を気楽に読もう」の(5)です。
今日取り上げる文章は、室町時代後期の作品『伊曾保物語(いそほものがたり)』の中の一話です。

伊曾保物語は、ギリシャのイソップ(アイソーポス)が紀元前6世紀につくったとされる『イソップ物語』を日本語に翻訳した作品です。

わが国にキリスト教の布教にやってきたイエズス会の宣教師が信者の教化に使おうとして翻訳、出版しました(1593年、豊臣秀吉の朝鮮出兵の頃です)。
当時の日本の話し言葉をもちい、ローマ字で表記された、東アジアで最初の活版印刷物です。
江戸時代になると仮名草子(かなぞうし)の『伊曾保物語』として出版され、広く普及しました(例:「うさぎと亀」など)。


意味をさぐりながら、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。

本文

ある時しやんと旅行におもむかせ給(たま)ふに、下人(げにん)どもに荷物をあておこなふ。

われもわれもと軽(かろ)き荷物をあらそひ捕りて、これをもつ。

ここに食物(じきもつ)を入れたるものあり。

その重きにおそれて、これを持つ者なし。

「さらば」とて、いそほ辞するにおよばず、「なに事も殿の御奉公ならば」とて、これを持つ。

その日の重荷、「いそほに過ぎたる者なし」と皆人いひけり。

日数(ひかず)経て行くほどに、この食物をつねに用(もち)ゆ。

かるがゆへに日に添えて軽くなりけり。

果てには、いと軽き荷物持ちてけり。

「あっぱれ賢き心宛(こころあて)かな」とてそねみ給ふ人々ありけり。



(注)
「しやんと」・・・シヤント。主人の名前。
「あておこなふ」・・・「割り当てた」。「あて」分担して、「おこなふ」持たせた。
「いそほ」・・・イソホ(イソップ)。物語の主人公。

(『伊曾保物語』「荷物を持つ事」)


文の主題(テーマ)を読み取ろう

イソップ物語は教訓をふくんだ寓話(ぐうわ)です。
この話では、イソホ(イソップ)の知恵をほめています。

競って軽い荷物を運ぼうとしたイソップ以外の人たち、それに対してイソップは食物の入った一番重い荷物を運ぶことになりました。

イソップのことを「あほやなあ」と思っていた人たちが、イソップの知恵に最後には「やられた」と思わされる「おち」のおもしろさを読み取らないといけません。


ワンポイント・レッスン

おもむかせ給ふ」・・・「おでかけになられる」。
江戸時代以前のわが国は身分社会です。身分が上の人に対しては過剰なほどの敬語を使いました。
逆にそのことを利用すれば、古文を読むとき、使われている敬語から誰のことをさしているのかを簡単に読み取ることができます。

下人(げにん)」・・・「使用人」、「身分の低い者」。
イソップは奴隷であったと言われています。

さらば」・・・「それならば」、「そうであるなら」。
古文では、「」は「そう」の意味です。
他の例:「されば」=「そうであれば」、「それゆえ」。

辞するにおよばず」・・・「ことわるまでもなく」。

かるがゆへに」・・・「このような理由で」。
「か(このように)あるがゆへに」が変化した形。「ゆへ」はわけ、理由。

けり」・・・「~た」。
軽くなりけり」=「軽くなった」。
「けり」は古文でよく使われる助動詞です。事実を客観的に過去のこととして記述するときに文末に用います。

果てには」・・・「最後には」。

あっぱれ」・・・「なんと」。

心宛(こころあて)」・・・「目的」、「心づかい」。

そねみ給ふ」・・・「そねむ」=「ねたむ」、「うらやましがって憎む」。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

ある時しやんと旅行におもむかせ給(たま)ふに、下人(げにん)どもに荷物をあておこなふ。

われもわれもと軽(かろ)き荷物をあらそひ捕りて、これをもつ。

ここに食物(じきもつ)を入れたるものあり。

その((1)     )におそれて、これを持つ者なし。

「さらば」とて、いそほ辞するにおよばず、「なに事も殿の御奉公ならば」とて、これを持つ。

その日の重荷、「いそほに過ぎたる者なし」と皆人いひけり。

日数(ひかず)経て行くほどに、この食物をつねに用(もち)ゆ。

かるがゆへに日に添えて軽くなりけり。

果てには、いと軽き荷物持ちてけり。

「(2)あっぱれ賢き心宛(こころあて)かな」とてそねみ給ふ人々ありけり。



問い

1、現代かなづかいに改めよ。
(1)あらそひ
(2)いひけり


(解答)
(1)あらそい
(2)いいけり


2、本文中の((1)     )に入る言葉として最も適切なものを次から選び、記号で答えよ。
ア 軽き
イ 重き
ウ 古き
エ 新しき

(解答)



3、「(2)あっぱれ賢き心宛(こころあて)かな」とあるが、人々がうらやみねたんだのは何か。最も適切なものを次から選び記号で答えよ。
ア いそほの強力ぶり
イ いそほの誠実な心
ウ いそほの責任感
エ いそほの先見の明

(解答)



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公立高校入試で出題された文章を、入試問題と身構えないで気楽に読みましょう。

問題文は『九州の道の記』からとられた一文です。
『九州の道の記』は、1592年、豊臣秀吉がおこなった朝鮮出兵(文禄の役)に随行した豊臣勝俊(木下勝俊)が、京都から肥前(佐賀県)名護屋までの旅程を書き残した作品です。
問題文は、筆者の豊臣勝俊が以前親交のあった僧の住まいを訪れたときのことを書いた一節です。

前回述べたように、(1)音読を心がける、(2)「何がおもしろい(興味深い)のか」を理解する、の2点に留意して、まず読んでみましょう。

( )内の平仮名は問題につけてあった読み仮名です。各行の下の小さい活字の部分は、問題に初めからついている注釈です。
また、問題文についていた注を本文のあとにのせているので、注を参考にしながら読み進んでください。


(本文)

かの坊の泉水心をつくし、草木など植ゑ置きたり。


なき人の手づから植ゑし草木ゆゑ庭も籠(まがき)もむつまじきかな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親しみ深く感じることよ

とよみければ、皆人袖(そで)をなむ濡(ぬ)らしける。


その庭の内に、自(おのづか)らいと大きなる石あり。


苔(こけ)むし、物古(ふ)りたるうへに、いとおもしろき松ひとり立てり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
趣深い

作りなさば、この外(ほか)のことはさもありなむ。
作ろうとすれば、これ以外のものは何とか作れよう

これには、いかならむ工(たくみ)の人もえ及ぶまじかりける。
・・・・・ ・
どのような・・・・・・・・・・・・・・・・・・及ぶことができなかった

種しあれば岩にもやとながめられし。
種さえあれば・・・・・・・・・という思いでながめられた

(注)
泉水=ここでは庭園のこと。
離(まがき)=竹などで粗く編んだ垣根。
工(たくみ)の人=植木職人。


文の主題(テーマ)を読み取ろう

昔の人も私たちと同じ人間です。
私たちと同じように感動し、同じことをおもしろがり、同じように喜んだり悲しんだりしたはずです。
ですから、古文を読むときも私たちの常識に従って読み進み、作者が伝えたい主題を常識にそって読み取ることが肝要です。

しかし、用いられている言葉は違います(だからこそ古文として特別に出題されるわけです)。
現代文とは違う言葉や、同じ言葉でも現在とは違う意味で使われている言葉に注意して読む必要があります。

この文の主題は、岩に生えていた松の木がつくる自然の造形美に対する驚嘆です。
今は亡き友人が丹精こめてしつらえた庭を訪ねた筆者が見た野生の松の木、その松がもつ人工ではない自然本来の美しさに目を見張る筆者の驚きの気持ちを読み取らないといけません。


ワンポイント・レッスン

いと」・・・「ひじょうに」「たいそう」「とても」。
古文で最もよく出てくる語の1つ。この文章でも2回出てきます。

え~まじ」・・・「~できない」。
「え」が前にあると、「え~ず」、「え~じ」、「え~まじ」、「え~で」など、すべて「~できない」という意味になります。


簡単な現代語訳(上に載せた古文だけのものを少なくとも3回音読したあと、訳を見てください。)

かの坊の泉水心をつくし、草木など植ゑ置きたり。
私が親交のあったお坊さんの庭園は、お坊さんが隅々まで心を配って花や木を植えていた。
なき人の手づから植ゑし草木ゆゑ庭も籠(まがき)もむつまじきかな
亡くなられた方が自ら植えた草木だから、庭も垣根も私には親しみ深く感じられることだなあ。
とよみければ、皆人袖(そで)をなむ濡(ぬ)らしける。
と短歌に詠(よ)んだところ、一緒にいた人は皆、浮かんだ涙を
袖でふいていた。
その庭の内に、自(おのづか)らいと大きなる石あり。
その庭の中に、たまたまとても大きな石があった。
苔(こけ)むし、物古(ふ)りたるうへに、いとおもしろき松ひとり立てり。
コケがはえ、なんとなく古びた石の上に、大変おもむき深い松が1本立っていた。
作りなさば、この外(ほか)のことはさもありなむ。
作ろうと思えば、この松以外の庭のものは何とか作ることができるだろう。
これには、いかならむ工(たくみ)の人もえ及ぶまじかりける。
しかし、この松には、どんな植木職人であっても及ぶことはできなかった。
種しあれば岩にもやとながめられし。
種さえあれば岩にも松は生えるのだなという思いでながめたことだ。


せっかく読んだので、ついでに出題された問題も解いておきましょう

次は、筆者が親交のあった僧の坊(住まい)を訪れたときのことを書いた文章である。これを読んであとの問いに答えなさい。


かの坊の泉水心をつくし、草木など植ゑ置きたり。

なき人の手づから植ゑし草木ゆゑ庭も籠(まがき)もむつまじきかな
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親しみ深く感じることよ

とよみければ、皆人袖(そで)をなむ濡(ぬ)らしける。

その庭の内に、自(おのづか)らいと大きなる石あり。

苔(こけ)むし、物古(ふ)りたるうへに、いとおもしろき松ひとり立てり。
(1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
趣深い

作りなさば、この外(ほか)のことはさもありなむ。
作ろうとすれば、これ以外のものは何とか作れよう

これには、いかならむ工(たくみ)の人もえ及ぶまじかりける。
・・・ ・・・
どのような・・・・・・・・・・・・・・・・・・・及ぶことができなかった

種しあれば岩にもやとながめられし。
種さえあれば・・・・・・・・・という思いでながめられた

(注)
泉水=ここでは庭園のこと。
離(まがき)=竹などで粗く編んだ垣根。
工(たくみ)の人=植木職人。



問い

1、「涙を流した」という内容を表すことばを、本文中から十字以内で抜き出しなさい。

2、(1)苔むし、物古りたるの意味として次のうち最も適しているものを一つ選び、記号を書きなさい。

ア 苔が傷んで、とても古びた
イ 苔が湿って、みすぼらしく古びた
ウ 苔がはがれて、少し古びた
工 苔が生えて、何となく古びた

3、本文中には筆者が庭に心ひかれているさまが描かれている。その内容を次のようにまとめた。(   )に入る内容を、現代のことばで十五字以内で書きなさい。

筆者は、僧が生前に精魂こめて自分で植栽した庭全体の様子に親しみを感じ、さらに庭の中の(   )の様子に趣を感じている。


解答

1、袖をなむ濡らしける(九字)

2、エ

3、大きな岩の上に自生した松の木(教育委員会発表の解答は「大きな石の上に立つ一本の松」)


(平成22年度大阪府公立高校学力検査前期問題より、配点は80点中12点)



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