慶應義塾普通部の入試問題の特徴と、早稲田アカデミーで普通部を目指す受験生のための学習法や注意点について、算数・国語・理科・社会の教科別に説明します。
【算数】慶應普通部・算数の入試問題の特徴

 問題の難度に対して受験者のレベルが高いので、高得点の勝負になります。問題数は減少傾向に、難度は上昇傾向にあります。合格最低点などの情報は公開されていませんが、慶應普通部を受験するのであれば8割以上を目標としたいところです。時間は40分。スピードが求められます。

 分野別には、計算・数の性質、規則性・場合の数、文章題、図形から毎年大問で2~3問程度ずつバランスよく出ていますが、図形の割合がやや大きくなっています。例年1~2問程度のやや難しめの問題は、図形分野で出ることが多いです。

 慶應普通部に合格するには、全分野にわたって標準的な問題の解法を身につけ、スムーズに解くことが必要です。標準的な問題とは、市販の書籍でいえば東京出版の「ステップアップ演習」のレベルの問題です。

■このような点に注意して学習しましょう

 対策が立てやすい学校に思えますが、8割を超えるためには、標準的な問題はすべて正解できるようにしなければなりません。短い試験時間と相まって、これが難しいのです。1~2問のミスが命取りになるということです。

 繰り返しになりますが、慶應普通部の算数への対策は、標準的な問題を「万遍なく」「迅速に」「確実に」できるようにすることです。このことを肝に銘じて学習するようにしましょう。

■塾別の対策

 標準的な問題の確実性を高めるには、早稲田アカデミー式の類題の反復演習は効果的です。問題レベルも「予習シリーズ」および「ダブルベーシック」のレベルの問題をきちんとできるようにすれば十分です。

 注意する点は、反復演習が単なる数字当てはめの「作業」で終わらないようにすることです。早稲田アカデミーは宿題が多いので、手作業の繰り返しをして終わってしまいがちですが、それでは慶應普通部に求められる確実性は身につきません。またいくら標準的な問題といってもまったく同じ問題が出るわけではないので、作業の丸暗記ではちょっとした設定の違いにさえ適応できないことにつながります。

 まずは問題の解法を学習したときに、きちんと理解・納得することが必要です。そのうえで練習する際には、手順への当てはめで終わるのではなく、「なぜその作業を行っているのか」といった点を頭の中で1つ1つ確認しながら行うようにすることが大切です。


【国語】慶應普通部・国語の入試問題の特徴

 慶應普通部の国語は、40分で100点満点。大問3題の年度が多く、物語文と随筆文の組合せかあるいは物語文と論説文、それに漢字の組合せです。文章自体はそれほど長文とはいえません。慶應普通部の出題形式については、記号選択と書き抜きがバランスよく出題され、記述は1、2問程度それも全部で最大50字程度です。

 意外と簡単そうに見えますが、かなり精度が高い読み取りをして、7割は得点しなければなりません。選択問題も紛らわしいものがあるので、安易な回答でミスをしないよう注意しましょう。知識分野については、漢字だけといってもよく、平易な漢字が多いので満点をめざしましょう。

■このような点に注意して学習しましょう

 慶應普通部の国語は、文章の読み落としや読み飛ばしに注意が必要です。本人が読み飛ばしていないつもりでも、よく読むと「あれ、そうだったのか」と思うような設問の仕方をしているからです。とにかく、文章の読み取り精度を上げる努力を怠らないようにしましょう。

 設問が10題あれば、解答するたびごとに文章を読む、つまり10回文章を読むくらいのつもりで取り組んでください。傍線部に関する問題では「その言葉が、この文章の中ではどういう意味で使われているのか」を大切にしないと正解できないものが多いです。類題校は、早稲田、桐朋(記述を除く)などです。論説文、随筆文の読み取り精度の向上の意味で、女子学院の演習も効果があります。

■塾別の対策

 早稲田アカデミー生は、無理に多量の問題演習をこなしていないでしょうか。慶應普通部の国語対策には多量の問題消化はかえって逆効果になることがあります。

 大量演習は、語感や語句の意味に敏感な読み方を要求する慶應普通部対策には向いていません。慶應普通部に限らず国語の学習において、多量の演習をすることで、読み取りする力を上げることはありません。それを続けていると慶應普通部の合格はますます厳しくなります。

 予習シリーズは、文章の長さの割には設問数が多く、細かく深く読み取ることを目的として編集されています。1回につき読むだけの時間を30分くらい作って、読み取りすると力の向上になるでしょう。

 授業の受け方ですが、知識分野に多くの時間をかけないことも時間の効率性を考えると重要です。特に6年2学期以降は、そのようにしてほしいです。

 問題演習である書き抜き問題は、問題文をどうしても丁寧に読まなければならないため、最も重点的に取り組んでください。

 予習シリーズの活用法を慶應普通部の入試傾向に合わせる家庭学習を心がけましょう。2学期のNN特訓にはその地道な学習の効果がきっと現れるはずです。

【理科】慶応普通部・理科の入試問題の特徴

 難問や奇問はあまりありません。試験時間は30分と少し短めですが、焦って解くこともない分量です。受験者のレベルを考えると、80%は得点したいものです。

 身近な動植物の絵がよく出題されます。絵を見て選ぶ問題もありますし、絵を描かせる問題もほとんど毎年出題されています。テキストの問題を解くだけではなく、挿絵的に使われている図や絵もしっかりと見ておいてください。

 難度は、標準レベル。普段の実力テストの偏差値通りの得点となる問題だと言えます。毎週の学習で、苦手単元を作らないよう注意が必要です。多量に覚えるよりも正確に覚えることを優先するのが大切です。

 慶應普通部に合格するクラス帯は、αクラスまたはアルファベットクラスの上位です。マンスリーテストや組み分けテストで、確実にこのクラスを維持できるだけの学力が必要です。

■このような点に注意して学習しましょう

 受験者のレベルに対して問題の難度が低いので、標準的なレベルの問題を高い正答率で解く必要があります。慶應だけを受験する生徒は少ないでしょうから、併願校を考えると少し難しい事を学習する必要はありますが、慶應合格に向けては、基礎を固める自分なりの学習が必要になります。

■塾別の対策

 普段から、授業や宿題でたくさんの問題を解く塾ですから、それ以上に問題量を増やす必要はありません。大切なのは、間違いのない知識と確実に解く力です。早く全部を終わらせることだけに気をとられずに、「正確に隅々まで読む。」「しっかりと筋道を考える。」勉強を心がけてください。

 また、四谷大塚の週例テストの復習は正答率40%以上の問題を復習してください。ミスによる失点に気がついたときには、

1 読み間違いによる失点か
2 知識の曖昧さによる失点か
3 考え方の勘違いか

を自分なりに判断をして、そのミスをなくすように普段の学習から変えていく努力をしてください。

 NNは、通塾に時間がかかりすぎるようでしたら、無理をする必要なないでしょう。その時間を弱点対策に当てる方が効果的なこともあります。

【社会】慶應普通部・社会の入試問題の特徴

 慶應普通部の社会は、30分100点満点で、大問5~6問の構成です。は、知識を記号選択で問う解答形式が多く、漢字指定の語句記入もあります。記述は出題されても1、2問程度で計50字程度です。慶應普通部の問題の水準については一見簡単そうに思われますが、何を答えていいのかわかりづらい問題もあります。合格最低点はかなり高いはずで、80点超えを目標にしたいところです。

■このような点に注意して学習しましょう

 慶應普通部の社会の記号選択問題には「2つ選んで記号解答」、「すべて選んで記号解答」という解答形式があり、1つ1つの用語の理解と暗記が正確でつながりがないと、得点に差がついてしまいます。時事社会問題には「ネットショッピングの便利さ」など小学生が考えないようなことを問われる問題もあり、ふだんからそのようなことに興味を持っているかを問われます。類題校は女子学院、早稲田などです。

■塾別の対策

 予習シリーズがメインテキストである早稲田アカデミー生は、塾での学習量は、慶應普通部が要求している知識量を満たしているので、心配する必要はありません。

 むしろ、多すぎて逆に学習の質が劣化する危険があります。受験生といってもまだ小学生であり、学習の量は自覚していてもその質はなかなか自覚しにくいです。

 慶應普通部の社会には、「知識を関連づけて覚える学習姿勢」が必要です。学習量が増えたことにより、知識の暗記ばかりに集中すると、学習に余計な負担がかかり成績が下がる原因にもなります。特に語句をたくさん覚える傾向が強い早稲田アカデミー生は、慶應普通部の入試傾向が記号選択による知識の確認なので、学習方法を2学期から軌道修正してほしいです。