お金を稼いでいるからエライの?

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お金を稼いでいるからエライの?


「給料袋がなくなって、銀行振り込みになってから、日本の父親の威厳が失墜した」という人がときどきいますよね。父親が「オレが稼いできたお金だぞ」と札束の入った給料袋を専業主婦の母親に差し出し、威張っている姿を見て、子どもは父親に「威厳」を感じていたということですが、ちょっと待ってください。その理屈、ツッコミどころ満載です。

まず気になるのは、そのような家庭で育った子どもの心の中には、「父親はお金を稼いでいるから、母親より偉いんだ」みたいな思い込みが生じてしまうのではないかということです。つまり、「お金を持っていることが偉いんだ」という拝金主義を植え付けることにかねません。幼いうちからそんな歪んだ信念を抱えてしまったら、幸せな人生を送ることは難しいじゃないかと思います。

家族がいるから稼げる

次に、たしかに父親は家族の代表として会社に行き、仕事をし、給料を受け取ってはいたんでしょうけれど、家族がいなければ、安心して仕事に集中できなかったであろうことを指摘したいと思います。母親が、栄養バランスまで考えたおいしい料理を作ってくれたり、Yシャツを洗濯して綺麗にアイロン掛けまでしてくれていたり、家の中の整理整頓・掃除をしてくれていたり、子どもたちの面倒を見ていてくれたりするからこそ、安心して仕事に打ち込めたのでしょう。

私は組織には属さず、個人事業主として、自宅で仕事をしています。子どもたちが仕事の邪魔をしにくることもたくさんあります。夕飯を食べたあとは、子どもたちと遊んだり、お風呂に入ったり、一緒に寝たりと、仕事をする暇などありません。「子どもたちがいなければもっと仕事に打ち込めるのに」とぼやきたくなったことはたくさんあります。子どもがおらず24時間仕事に打ち込める同業の友人を見て、うらやましく思ったこともあります。

しかし、ふと冷静に考えてみると、子どもたちがいなければ、妻がいなければ、きっと私はこんなに仕事に打ち込めていないはずなのです。実際、夏休みなどに妻と子どもたちだけで旅行に行っている間など、いざ一人になるとなんだか張り合いがなくなって、思うほどに仕事ははかどりません。そんなとき「オレは家族がいてくれるおかげで仕事ができているのだな」と再確認します

子どもに「社畜教育」をしてはいけない!

だから子どもたちには「パパがもらっているお金はパパだけの力で稼いでいるんじゃないんだよ。ママが家のことやってくれて、キミたちが応援してくれるからパパは仕事ができているんだよ」と伝えています。要するにチームプレーなのです。私は試合に出る選手です。でも選手だけではどうにもなりません。心身両面でサポートをしてくれるマネージャーのようなママがいるからベストコンディションを保てます。へこたれそうになったとき応援してくれるサポーターのような子どもたちがいるからがんばれます。

だから、私の感覚からいうと、給料袋に入っている札束は、父親一人の力で稼いだものではないということになります。家族みんなの力で得たものです。それなのに、自分一人の手柄だと思って給料袋を差し出す父親って、ちょっと大人げないですよね。

そもそも家族が畏怖の念を感じているのは、父親ではなく、給料袋ではないかということです。ということは、父親に給料をくれる会社はもっと偉いということになります。だとすれば、子どもの心の中にはいつしか「家族よりも会社が偉い」という価値観も芽生えるでしょう。それじゃまるで「社畜教育」です。

「自分自身に正しいことを課す厳しさ」こそ威厳の源

「自分自身に正しいことを課す厳しさ」こそ威厳の源

「自分自身に正しいことを課す厳しさ」こそ威厳の源


そもそも、腕力で人を従わせようと思うことは言語道断ですが、経済力を盾にとるのも同じくらいに卑怯なことです。そんなことをすれば、父親の威厳はますます失墜するだけです。

では、人は、どんなときに「この人すごい、かっこいい」と思うのでしょうか。お金とか他人からの評価とかいう目先の誘惑に振り回されるのではなく、高潔な人生を送ること、誇り高さ、気高さ、そういうものに触れたときではないでしょうか。本当の威厳とは、「人間として正しいことができる強さ」や「自分自身に正しいことを課す厳しさ」がにじみ出ていることをいうのではないかと思います。威張ってわがままを通す見せかけの強さよりも、自分が過ちを犯したときにはそれを素直に認め、相手が子どもであっても素直に謝ることができる強さ、自分よりも弱いものに思いやりをもてる強さこそ、本当の威厳の源ではないでしょうか。

仕事も育児もがんばる父親は、わざわざ威張らなくても、尊敬されます。妻が専業主婦であろうが、共働きであろうが、関係ありません。昭和の頑固オヤジのような見た目の派手さはないかもしれませんが、それでも威厳は十分に感じてもらえていると思います。そういう父親に憧れるような子どもなら、大人になって、本当の威厳をもつ人に育ってくれるでしょう。そのためにも、本当の威厳を備えた父親になりたいものです。

参照:http://allabout.co.jp/gm/gc/444573/

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