以前に比べると極端にやさしくなった中学校理科、ところが時折ひょこっと難問が顔を出します。
中1だと圧力
「重さ」と「力」、「力」と「圧力」の区別や関係は教えないまま、いきなり圧力の計算問題が出てきます。
さらに困ったことに、以前習った圧力の単位、g重/平方cmだと、まだ感覚的に理解できますが(1平方cmを1gで押す感じという説明で子どもたちになんとなく実感できる)、国際単位系に従って書き改められた今の教科書だと、出てくる圧力の単位はパスカルPa(N/平方m)です。普段の実生活では全く使われないN(ニュートン)がいきなり現れたって、実感のしようがない。
圧力の問題の指導法
「重さ2kgの直方体を縦5cm、横8cmの面を下にして置いたとき、床面が受ける圧力はいくらか」という問題をどのように解かせるか、教え方に大変苦慮しています。
私の場合、
(1)圧力の単位はPa=N/平方mだとまず覚えなさい、そしてどんな問題もこの式、N/平方mにきちんと当てはめなさいというところから出発します。
(2)N/平方mのうち、まずNをきちんと求めさせます。100g=1Nである(これだけは全員がわりとすぐに覚えます)、だから2kgだと20Nになることを答えさせます。このとき、全員がすんなりと20Nが浮かんではきません。100gが1Nだから1kgは10倍の10N、1kg=10Nと覚えさせた後、2kgだから20Nとしないと解けない子がでてきます。
(3)さらに厄介なのが分母の平方mのほうです。面積は5×8=40ですがこの場合の単位はcm×cmなので平方cmであることを確認させ、小学校の復習だということで1平方m=10000平方cmを思い出させた後、さらに40平方cmが0.004平方mだと換算させなければなりません。小学生のときに習った1平方m=10000平方cmがすぐに思い浮かべられる子のほうが少ないし、さらに平方cmを平方mになおすことができない子が出てきます。
(最初から平方mを求める方法もあります。先に5cm=0.05m、8cm=0.08mと換算しておきます。0.05×0.08=0.004平方mで、1平方m=10000平方cmを使わなくても面積を平方mで求められます。公式に数値を忠実にあてはめるべきという理科の鉄則からすると、このほうが正しいやり方かもしれません。)
(4)ここまで苦労してたどりついたとして、まだ最後に関門が残っています。やっと出てきた20N/0.004平方mという分数を簡単な整数になおさなければ答えにはなりません。私は、小学6年生の、分数は分母と分子に同じ数をかけても大きさはかわらないというところに戻って、分母分子にこの場合1000をかけさせます。20000/4になって、さらにわり算をして5000、これでやっと正解に到達です。
圧力の問題には子どもの苦手な領域が詰まっている
今の子どもたちが一番苦にする、(1)公式を理屈はさておき正確に暗記する、(2)(3)単位の関係を正しく覚えていてきちんと換算できる、(4)分数の根元的な意味がわかっており正確に計算できる、これらの条件のうち一つでも欠けていると、この問題は解けません。
これは、中学生になったばかりの子どもたちにとっては、ほぼ不可能に近いことです。
定期テスト前にはなんとか練習を繰り返して点をとらせますが、ほぼ全員がすぐに忘れてしまいます。
中3になって高校入試前、圧力の問題がさっぱりわからないと泣きつかれることが非常に多い(全科目、全単元中で一番多いのではないでしょうか)。
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