銅の酸化と質量の比
ステンレスの皿(ステンレスは酸化しない金属なので加熱しても変化せず、質量はかわらない)に銅をのせ、加熱すると、銅は空気中の酸素と結びつき酸化銅になる。
赤かっ色の銅が、加熱すると黒色の酸化銅にかわる。
2個の銅原子が、1個の酸素分子と結びつき、2個の酸化銅にかわることがわかっている。
このとき、もとの銅の質量を測り、さらに加熱後の酸化銅の質量を測定すると、下のグラフのようになる。

銅が1gだとできる酸化銅は1.25g、2gだと2.5g、3gだと3.75g、4gだと5g。
つまり、銅と、できた酸化銅の比は常に4:5で一定である。
これを定比例の法則という。
だから、例えば銅5gを反応させると何gの酸化銅ができるかと問われれば、5:x=4:5の比例式をたてることができるから、4x=25、x=6.25gだとわかる。
このように、銅の酸化の場合、反応前の銅の質量と反応後の酸化銅の比は常に4:5(銅と酸素の質量の比は4:1)だが、これは、中学生の学習範囲では、実験で求められた数値から気づかせるだけである。
なぜそうなるのか、本当の理由を考えてみたい。
定比例の法則が成り立つ理由
原子の構造から
すべての原子は、同じ構造をしている。
原子核とその周りを回る電子からできている。さらに原子核は陽子と中性子からできている。
陽子の数が一番少ないのは水素であり1個である。2番目のヘリウムは2個、3番目のリチウムは3個、4番目のベリリウムは4個、・・・となり、酸素は8個、銅は29個である。
すべての原子の、陽子1個の質量は等しい。また、陽子と中性子の質量も等しい(電子の質量は陽子の1840分の1でほぼ無視できる軽さである)。
だから、例えば陽子の数7個の窒素の質量は中性子の質量も7で計14、陽子の数8個の酸素の質量は中性子の質量も8で計16、したがって同じ個数の窒素原子と酸素原子の質量の比は14:16、すなわち7:8ということになる。
(この陽子の数は原子番号といわれるものと一致する。原子番号1は水素、2はヘリウム、7が窒素、8が酸素ということになる。)
まとめると、原子番号nの原子だと、陽子の数がn個で同じ質量の中性子の数もn個であり、だから質量はn+nということになる。
(例)
左の図はヘリウム原子である。
ヘリウムの原子番号は2である。
2個の陽子と、同数の2個の中性子を持っている。
したがって、質量は2+2=4ということになる。
(これはあくまで原則である。原子には同位体といわれるものが存在し、例えば水素は、原則通りだと原子番号1だから陽子1個、中性子1個を持つはずだが、そのような水素は少なく、自然界に存在する水素の99.9%近くは陽子1個だけで中性子を持たない同位体である。また、銅は原子番号29であり、29個の陽子を持つが、中性子35個のものが自然界に存在する銅の6割以上になり、実験で用いる銅も29個の陽子と35個の中性子を持つものを用いている。)
銅の酸化と質量の比
もういちど、化学反応式と模式図を眺めてみよう。

2個の銅原子が、1個の酸素分子と結びつき、2個の酸化銅ができる。
銅の質量は、原子番号29で陽子が29個、中性子は35個で、質量は29+35=64。
2個の銅だと質量は64×2=128。
酸素は原子番号8で陽子数は8個、中性子も8個。原子の質量は8+8=16。酸素分子は2個の酸素原子が結びついたものだから、酸素分子1個の質量は16×2=32。
酸化銅1個は銅原子1個と酸素原子1個からできているから質量は64+16=80。2個の酸化銅の質量は80×2=160。
以上のことから、反応前の銅の質量は128で、反応する酸素の質量は32、反応後の酸化銅の質量は160。
この比128:32:160を、約数の32でわって簡単にすると、4:1:5。
以上より、常に銅:酸化銅が4:5になる理由を理解できる。
(いろいろ銅の質量をかえても、結びつく酸素、できる酸化銅の割合は変わらない。)
また、酸化銅を構成する銅と酸素の比を考えたとき、常に銅:酸素の比が4:1である理由も理解できる。
マグネシウムの酸化と質量の比
マグネシウムを加熱すると酸素と反応して酸化マグネシウムができる反応の質量比を、同じように考えてみよう。
2個のマグネシウム原子が1個の酸素分子と結びつき、2個の酸化マグネシウムができる。
実験では、反応前のマグネシウムと、反応後の酸化マグネシウムの比が3:5(したがって、マグネシウムと、反応する酸素の質量比は3:2)であることを確かめることができる。
そうなる理由を考えてみよう。
マグネシウムの原子番号は12であり、12個の陽子と12個の中性子を持つ。したがって質量は24である。
酸素の原子番号は8であり、8個の陽子と8個の中性子を持つから、質量は16である。
以上より、マグネシウム+酸素→酸化マグネシウムの質量を考える。
2個のマグネシウム原子の質量の合計は24×2=48。
2個の酸素原子が結びついた1個の酸素分子の質量は16×2=32。
1個の酸化マグネシウムの質量は、酸素+マグネシウム=16+24=40、2個の酸化マグネシウムができるから40×2=80。
以上より、2個のマグネシウム原子:1個の酸素分子:2個の酸化マグネシウム=48:32:80。
比を公約数16でわって簡単にして、3:2:5。
マグネシウム:酸素:酸化マグネシウム=3:2:5である理由を理解できる。
さらに詳しく理解するために
原子量
原子の質量を表わす数字を原子量という。
原子は、原子核と電子からできているが、電子の質量は非常に小さいので(陽子の質量の1840分の1)、原子量は原子核の質量と考えてよい。
また、原子核は陽子と中性子より成り立っているので、原子量は陽子と中性子の質量の和でもある。
約100種類の原子は、陽子の数の少ない順に原子番号をつけられている。原子番号は、原子番号1の水素から始まって、2ヘリウム、3リチウム、4ベリリウム、5ホウ素、6炭素、7窒素、8酸素、・・・・となっている。
通常は、原子核に含まれる陽子と中性子の数は一致するので、原子量は原子番号の2倍になる。
原子番号2のヘリウムの原子量は4、原子番号6の炭素の原子量は12、原子番号7の窒素の原子量は14、原子番号8の原子量は16というように、これらの物質の原子量は原子番号の2倍である。
ところが、原子によっては、陽子の数と中性子の数が一致しないものがある。例えば水素は、陽子1個、中性子1個の水素も存在するが自然界には極めて少ない。陽子1個だけで中性子を持たないものが一般的である。したがって、水素は原子番号1、原子量1ということになる。
原子量が原子番号の2倍にならない物質として、水素以外に、ナトリウム、アルミニウム、塩素、鉄、銅などがある。
分子量
分子をつくっている原子の原子量の総和。
例えば二酸化炭素だと、酸素の原子量が16、炭素の原子量が12、2個の酸素と1個の炭素からできているので二酸化炭素の分子量は16×2+12=44ということになる。
水の電気分解と質量の比
水を電気分解すると陰極に水素が発生し、陽極に酸素が発生する。

水素の質量(原子量)は1であり、酸素の質量(原子量)は16である。
水の質量を考える。
水分子は2個の水素原子(質量は1×2)と1個の酸素原子(質量は16)でできているので質量(分子量)は18。
水の電気分解では2個の水分子が分解されるので質量は18×2=36。
水素の質量を考える。
発生する水素の原子1個の質量は1、水素分子は2個の原子が結びついているので質量は2、その水素分子が2個できるので質量は2×2=4。
酸素の質量を考える。
酸素の原子1個の質量は16、酸素分子1個は2個の酸素原子からできているので質量は32。
以上より、水:発生する水素:発生する酸素=36:4:32。
公約数4でわって簡単にして、水:水素:酸素=9:1:8。
水の電気分解では、発生する水素と酸素の質量の比は1:8だとわかる。
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ステンレスの皿(ステンレスは酸化しない金属なので加熱しても変化せず、質量はかわらない)に銅をのせ、加熱すると、銅は空気中の酸素と結びつき酸化銅になる。

2個の銅原子が、1個の酸素分子と結びつき、2個の酸化銅にかわることがわかっている。
このとき、もとの銅の質量を測り、さらに加熱後の酸化銅の質量を測定すると、下のグラフのようになる。

銅が1gだとできる酸化銅は1.25g、2gだと2.5g、3gだと3.75g、4gだと5g。
つまり、銅と、できた酸化銅の比は常に4:5で一定である。
これを定比例の法則という。
だから、例えば銅5gを反応させると何gの酸化銅ができるかと問われれば、5:x=4:5の比例式をたてることができるから、4x=25、x=6.25gだとわかる。
このように、銅の酸化の場合、反応前の銅の質量と反応後の酸化銅の比は常に4:5(銅と酸素の質量の比は4:1)だが、これは、中学生の学習範囲では、実験で求められた数値から気づかせるだけである。
なぜそうなるのか、本当の理由を考えてみたい。
定比例の法則が成り立つ理由
原子の構造から
すべての原子は、同じ構造をしている。
原子核とその周りを回る電子からできている。さらに原子核は陽子と中性子からできている。
陽子の数が一番少ないのは水素であり1個である。2番目のヘリウムは2個、3番目のリチウムは3個、4番目のベリリウムは4個、・・・となり、酸素は8個、銅は29個である。
すべての原子の、陽子1個の質量は等しい。また、陽子と中性子の質量も等しい(電子の質量は陽子の1840分の1でほぼ無視できる軽さである)。
だから、例えば陽子の数7個の窒素の質量は中性子の質量も7で計14、陽子の数8個の酸素の質量は中性子の質量も8で計16、したがって同じ個数の窒素原子と酸素原子の質量の比は14:16、すなわち7:8ということになる。
(この陽子の数は原子番号といわれるものと一致する。原子番号1は水素、2はヘリウム、7が窒素、8が酸素ということになる。)
まとめると、原子番号nの原子だと、陽子の数がn個で同じ質量の中性子の数もn個であり、だから質量はn+nということになる。

左の図はヘリウム原子である。
ヘリウムの原子番号は2である。
2個の陽子と、同数の2個の中性子を持っている。
したがって、質量は2+2=4ということになる。
(これはあくまで原則である。原子には同位体といわれるものが存在し、例えば水素は、原則通りだと原子番号1だから陽子1個、中性子1個を持つはずだが、そのような水素は少なく、自然界に存在する水素の99.9%近くは陽子1個だけで中性子を持たない同位体である。また、銅は原子番号29であり、29個の陽子を持つが、中性子35個のものが自然界に存在する銅の6割以上になり、実験で用いる銅も29個の陽子と35個の中性子を持つものを用いている。)
銅の酸化と質量の比
もういちど、化学反応式と模式図を眺めてみよう。

2個の銅原子が、1個の酸素分子と結びつき、2個の酸化銅ができる。
銅の質量は、原子番号29で陽子が29個、中性子は35個で、質量は29+35=64。
2個の銅だと質量は64×2=128。
酸素は原子番号8で陽子数は8個、中性子も8個。原子の質量は8+8=16。酸素分子は2個の酸素原子が結びついたものだから、酸素分子1個の質量は16×2=32。
酸化銅1個は銅原子1個と酸素原子1個からできているから質量は64+16=80。2個の酸化銅の質量は80×2=160。
以上のことから、反応前の銅の質量は128で、反応する酸素の質量は32、反応後の酸化銅の質量は160。
この比128:32:160を、約数の32でわって簡単にすると、4:1:5。
以上より、常に銅:酸化銅が4:5になる理由を理解できる。
(いろいろ銅の質量をかえても、結びつく酸素、できる酸化銅の割合は変わらない。)
また、酸化銅を構成する銅と酸素の比を考えたとき、常に銅:酸素の比が4:1である理由も理解できる。
マグネシウムの酸化と質量の比
マグネシウムを加熱すると酸素と反応して酸化マグネシウムができる反応の質量比を、同じように考えてみよう。

実験では、反応前のマグネシウムと、反応後の酸化マグネシウムの比が3:5(したがって、マグネシウムと、反応する酸素の質量比は3:2)であることを確かめることができる。
そうなる理由を考えてみよう。
マグネシウムの原子番号は12であり、12個の陽子と12個の中性子を持つ。したがって質量は24である。
酸素の原子番号は8であり、8個の陽子と8個の中性子を持つから、質量は16である。
以上より、マグネシウム+酸素→酸化マグネシウムの質量を考える。
2個のマグネシウム原子の質量の合計は24×2=48。
2個の酸素原子が結びついた1個の酸素分子の質量は16×2=32。
1個の酸化マグネシウムの質量は、酸素+マグネシウム=16+24=40、2個の酸化マグネシウムができるから40×2=80。
以上より、2個のマグネシウム原子:1個の酸素分子:2個の酸化マグネシウム=48:32:80。
比を公約数16でわって簡単にして、3:2:5。
マグネシウム:酸素:酸化マグネシウム=3:2:5である理由を理解できる。
さらに詳しく理解するために
原子量
原子の質量を表わす数字を原子量という。
原子は、原子核と電子からできているが、電子の質量は非常に小さいので(陽子の質量の1840分の1)、原子量は原子核の質量と考えてよい。
また、原子核は陽子と中性子より成り立っているので、原子量は陽子と中性子の質量の和でもある。
約100種類の原子は、陽子の数の少ない順に原子番号をつけられている。原子番号は、原子番号1の水素から始まって、2ヘリウム、3リチウム、4ベリリウム、5ホウ素、6炭素、7窒素、8酸素、・・・・となっている。
通常は、原子核に含まれる陽子と中性子の数は一致するので、原子量は原子番号の2倍になる。
原子番号2のヘリウムの原子量は4、原子番号6の炭素の原子量は12、原子番号7の窒素の原子量は14、原子番号8の原子量は16というように、これらの物質の原子量は原子番号の2倍である。
ところが、原子によっては、陽子の数と中性子の数が一致しないものがある。例えば水素は、陽子1個、中性子1個の水素も存在するが自然界には極めて少ない。陽子1個だけで中性子を持たないものが一般的である。したがって、水素は原子番号1、原子量1ということになる。
原子量が原子番号の2倍にならない物質として、水素以外に、ナトリウム、アルミニウム、塩素、鉄、銅などがある。
分子量
分子をつくっている原子の原子量の総和。
例えば二酸化炭素だと、酸素の原子量が16、炭素の原子量が12、2個の酸素と1個の炭素からできているので二酸化炭素の分子量は16×2+12=44ということになる。
水の電気分解と質量の比
水を電気分解すると陰極に水素が発生し、陽極に酸素が発生する。

水素の質量(原子量)は1であり、酸素の質量(原子量)は16である。
水の質量を考える。
水分子は2個の水素原子(質量は1×2)と1個の酸素原子(質量は16)でできているので質量(分子量)は18。
水の電気分解では2個の水分子が分解されるので質量は18×2=36。
水素の質量を考える。
発生する水素の原子1個の質量は1、水素分子は2個の原子が結びついているので質量は2、その水素分子が2個できるので質量は2×2=4。
酸素の質量を考える。
酸素の原子1個の質量は16、酸素分子1個は2個の酸素原子からできているので質量は32。
以上より、水:発生する水素:発生する酸素=36:4:32。
公約数4でわって簡単にして、水:水素:酸素=9:1:8。
水の電気分解では、発生する水素と酸素の質量の比は1:8だとわかる。
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