入試レベルの発展問題を取り上げます。


例題1:グラフは、塩酸10立方cmにいろいろ質量を変えて石灰石を入れ石灰石と塩酸たときに発生する気体の質量と石灰石の質量との関係を表したものである。次の各問いに答えよ。

(1)石灰石2.0gに塩酸10立方cmを加えたとき、反応しないで残った石灰石の質量は何gか。

(2)問い(1)で反応しないで残った石灰石をすべて反応させるには、同じ濃度の塩酸を少なくともあと何立方cm加えればよいか。小数第2位を四捨五入して答えよ。

(3)グラフで、同じ濃度の塩酸20立方cmに石灰石2.5gに加えたときに発生する気体の質量は何gか。

(4)塩酸の量を5立法cmにして石灰石を入れていくと、石灰石の質量と発生する気体の質量の関係を表すグラフはどうなるか。グラフに書き入れなさい。



(解法のポイント)
単純な比例ではなくて、途中からグラフが横軸に平行になる問題です。

この種類の問題だと、なぜそうなったのか、その理由を先に理解しておかないとあとの問題を解けません。

この問題だと、途中で発生する気体の質量が増えなくなったのは、塩酸が10立方cmしかないことが原因です。
石灰石の量がある値を超えると、石灰石をいくら増やしても石灰石と反応する塩酸がもはや存在しないので気体が発生しなくなったわけです。

次に、注目しないといけないのはグラフが折れたところ、増えなくなった点の座標です。

この問題では、石灰石1.5g気体の質量が0.6gのときが目をつける場所です。このとき、石灰石と塩酸が過不足なく完全に反応しています。

それ以前は塩酸は充分なのに石灰石が足らない場合(つまり、塩酸はまだ残っている)、それ以後は塩酸が足らなくなって余った石灰石が残っている場合です。

この、「塩酸10立方cmのとき、石灰石1.5gで発生する気体の質量が0.6g」を使って、すべての問題を解いていきます。


(1)石灰石2.0gに塩酸10立方cmを加えたとき、反応しないで残った石灰石の質量は何gか。

石灰石1.5g気体の質量が0.6gのとき」、石灰石と塩酸はどちらも余すところなく完全に反応したわけだから、残った石灰石は2.0-1.5=0.5g。


(2)問い(1)で反応しないで残った石灰石をすべて反応させるには、同じ濃度の塩酸を少なくともあと何立方cm加えればよいか。小数第2位を四捨五入して答えよ。

石灰石1.5g塩酸10立方cmのとき」完全に反応することをここでは使います。

残った石灰石は0.5g、その石灰石と反応する塩酸の体積をx立方cmとして比例式をつくります。
0.5:x=1.5:10
1.5x=5
15x=50
x=3.33・・・

よって、3.3立法cm。


(3)グラフで、同じ濃度の塩酸20立方cmに石灰石2.5gに加えたときに発生する気体の質量は何gか。

石灰石1.5g塩酸10立方cmのとき」完全に反応するわけですから、塩酸が20立方cmだと石灰石は3.0gまで反応して気体を発生させることができます。

石灰石が2.5gだと塩酸は充分足りているので石灰石は完全に反応して気体を発生します。

そして次に、「石灰石1.5g気体0.6g発生する」を利用して比例式をたてます。

発生する気体の体積をxgとすると、2.5:x=1.5:0.6
1.5x=1.5
x=1.0

答えは1.0gです。


(4)塩酸の量を5立法cmにして石灰石を入れていくと、石灰石の質量と発生する気体の質量の関係を表すグラフはどうなるか。グラフに書き入れなさい。

再び、「石灰石1.5g塩酸10立方cmのとき」完全に反応することを利用します。

5立方cmの塩酸と反応する石灰石の質量をxgとすると、x:5=1.5:10
10x=7.5
x=0.75

石灰石が0.75gまでは石灰石の質量に比例して発生する気体の質量も増加しますが、石灰石が0.75gを超えるともはや反応する塩酸が残っていないので発生する気体の量は増えません。

また、このとき発生する気体の質量をxとすると、0.75:x=1.5:0.6
1.5x=0.45
x=0.3

石灰石が0.75gのとき、発生する気体の質量は0.3gだとわかります。

以上より、次のようなグラフになります。
石灰石と塩酸(2)














では、実際の入試問題に挑戦してみましょう。

例題2:5本の試験管にn%の塩酸を10gずつとり、それぞれに0.2g、0.4g、0.6g、0.8g、1.0gのマグネシウムを加えて完全に反応させた。Mgと塩酸グラフは、そのとき発生した水素の体積をはかり、グラフにしたものである。

(1)この実験で、マグネシウムが過不足なく完全に反応したのはマグネシウムを何g加えたときか。

(2)3.0gのマグネシウムを完全に反応させるには、塩酸を何g入れる必要があるか。

(3)この塩酸の濃度を2倍にしたとき、マグネシウム0.4gから発生する水素の体積は何立方cmか。

(4)2n%の塩酸15gにマグネシウムを2.0g加えて完全に反応させると、水素は何立方cm発生するか。



(解法のポイント)
まず、途中からグラフが折れて横軸に平行になったのはなぜか、その理由をわかること。
マグネシウムが0.6gを超えると、塩酸が足らなくなったからです。

次に、n%塩酸10gとき、マグネシウム0.6gで発生する水素600立方cmであることを使って問題を解くことを徹底すること。


(1)この実験で、マグネシウムが過不足なく完全に反応したのはマグネシウムを何g加えたときか。

「マグネシウム0.6gで発生する水素600立方cmのとき過不足なく反応しているわけだから、答えは0.6g。


(2)3.0gのマグネシウムを完全に反応させるには、塩酸を何g入れる必要があるか。

塩酸10gとき、マグネシウム0.6g」を使って比例式をたてます。

塩酸の質量をxgとすると、x:3.0=10:0.6
0.6x=30
6x=300
x=50

答えは50g。


(3)この塩酸の濃度を2倍にしたとき、マグネシウム0.4gから発生する水素の体積は何立方cmか。

n%塩酸10gとき、マグネシウム0.6gまでは、マグネシウムは完全に反応しています。言い換えると、塩酸は充分足りています。
マグネシウムが0.4gだと、n%の塩酸でも足りているので、濃度を2倍にしても影響はありません。

マグネシウム0.6gで発生する水素600立方cmである」ことから、水素の体積をxにして方程式をたて、0.4:x=0.6:600
0.6x=240
6x=2400
x=400

答えは400立方cmです。


(4)2n%の塩酸15gにマグネシウムを2.0g加えて完全に反応させると、水素は何立方cm発生するか。

n%塩酸10gとき、マグネシウム0.6gで発生する水素600立方cmであること」のすべてを使って考えていきます。

塩酸の濃度が2倍になったら、半分の量でもとの濃度の塩酸と同じ働きをします。逆にいうと、2n%の塩酸15gは、n%の塩酸30gと同じ働きをするということです。
(わかっているのはn%の塩酸のときなので、このようにn%の塩酸に換算して考えるのがコツです。)

次に、2n%の塩酸15g(=n%の塩酸30g)と反応するマグネシウムの質量を、「n%塩酸10gとき、マグネシウム0.6gを使って比例式をたてて求めます。
反応するマグネシウムの質量をxgとすると、n%の塩酸30gと反応するマグネシウムの量は30:x=10:0.6
10x=18
x=1.8g

つまり、マグネシウムを2.0g加えても1.8gしか反応しない、塩酸が足りなくなって0.2gのマグネシウムは反応しないで残ったままだということがわかります。

最後に、1.8gのマグネシウムで発生する水素の体積をxとし、「マグネシウム0.6gで発生する水素600立方cm」を使い比例式をつくります。
1.8:x=0.6:600
0.6x=1080
6x=10800
x=1800

1800立方cmが答えです。




理科の全目次はこちら
理科 分野別学習目次