化学変化の発展分野である、原子の構造、イオン、電解質と非電解質、イオンと電気分解、イオンと酸・アルカリ、中和についてまとめました。
原子の構造
すべての原子は、質量の大きい原子核とそのまわりを回っている電子から構成されています。原子核は、+の電気を帯びた陽子と電気を帯びていない中性子からできています。
左の図は炭素の原子ですが、炭素は6個の陽子と中性子でできた原子核と、そのまわりを回っている6個の電子から構成されています。
陽子と中性子の個数と質量は等しく、陽子と電子の個数も等しいことがわかっています。
原子核に含まれる陽子(+の電気を帯びている)の個数と、そのまわりを回っている電子(-の電気を帯びている)の個数は等しいので、原子全体はプラスでもマイナスでもない、電気を帯びていない状態にあります。
イオン
原子核のまわりを回っている電子の軌道はいくつかの層をに分かれます。一番近い層には2個の電子、その外側の層には8個の電子、さらにその外側には8個の電子と、層に含まれる電子の数も決まっています。
左の図はナトリウムの原子です。
陽子の個数は11個、原子核全体で帯びているプラスの電気は11です。
電子の個数も11個で、帯びているマイナスの電気も11です。
この状態では、原子全体はプラスでもマイナスでもありません。
ところが、原子は、一番外側の層の電子の数が8個のときに安定するという性質があります。
ナトリウムの場合、内側から2番目の層の電子の個数が8個、その外側の層の電子の個数は1個ですから、外側の電子1個を手放すと、一番外側の層の電子の個数が8個となって安定します。
一番外側の層の電子を手放してしまうと、原子核のプラスの数は11、電子のマイナスの数は10となり、全体では1のプラスになってしまいます。
この、電気を帯びてしまった状態の原子をイオン、+の電気を帯びたので陽イオン、+イオンといいます。
左の図は塩素原子です。
陽子の数、原子核の帯びているプラスの電気は17です。
電子の個数も17個、帯びているマイナスは17です。
原子全体はプラスでマイナスでもありません。
塩素原子の一番外側の層の電子の個数は7個です。
あと1個、電子を他からもらうと、電子の個数が8個になって安定します。
他の原子が手放した電子を1個受け取ると、外側の電子の数が8個になって安定しますが、原子核のプラスの電気の量は17個、電子のマイナスの量は18個になり、全体では1のマイナスを帯びてしまいます。
全体で電気を帯びてしまったのでイオン、負の電気を帯びたので陰イオン、-イオンといいます。
陽イオン(+イオン)・・・電子を手放してプラスの電気を帯びたイオン。
水素と金属のイオンが多い。
右肩の数字で帯びたプラスの電気の数を表わします。
水素イオンは1個の電子を手放し+1の電気を帯び、銅イオンは2個の電子を手放し+2の電気を帯びています。
陰イオン(-イオン)・・・電子を受け取ってマイナスの電気を帯びたイオン。
塩化物イオン(塩素の原子がイオンになったもの)や、原子が2個以上結びついて陰イオンになったものが多い。
右肩の数字で帯びた電気の数を表わします。
塩化物イオンは1個電子を受け取り-1の電気を帯び、硫酸イオンは2個電子を受け取り-2の電気を帯びています。
電解質と非電解質
物質が水に溶けるとき、分子のままで水に溶けてしまうものと、陽イオンと陰イオンに分かれて溶けてしまうものの2種類に分かれます。
電離・・・物質が水に溶けるとき、陽イオンと陰イオンに分離すること。
電解質・・・水に溶けて陽イオンと陰イオンに分かれる物質のこと。電離する物質といってもよい。ばらばらになったイオンが電極に引かれるので、水溶液を電流が流れます。
塩化ナトリウム(食塩)、塩化水素(水溶液が塩酸)などの酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリ、塩化銅などは電解質です。
非電解質・・・水に溶けるとき電離しないで分子のままで溶ける物質のこと。水に溶けた分子が電気を帯びていないので電極に引かれることはなく、水溶液を電流は流れません。
砂糖やエタノールが非電解質の代表的な例です。
電離の式
塩化ナトリウムがナトリウムイオンと塩化物イオンに電離
塩化水素が水素イオンと塩化物イオンに電離
水酸化ナトリウムがナトリウムイオンと水酸化物イオンに電離
塩化銅が銅イオンと塩化物イオンに電離
電気分解とイオン
水溶液中の電極のうち、電源の+極につながったほうを陽極、電源の-極につながったほうを陰極といいます。
陽極には-の電気を帯びた陰イオンが引き寄せられ、陽極に電子を渡します。電子を渡した陰イオンはイオンでなくなり原子に戻り、陽極に付着します(気体の場合は分子になって陽極に付着します)。
陰極には+の電気を帯びた陽イオンが引き寄せられ、陰極から電子を受け取ります。電子をもらった陽イオンはイオンであることをやめて原子に戻り、陰極に付着します(気体の水素だと分子になって付着します)。
塩化銅水溶液の電気分解

陽イオンである銅イオンは陰極に引かれます。
陰イオンである塩化物イオンは陽極に引かれます。
陰極では、銅イオンが2個の電子を受け取って銅原子になり、陰極に付着します。
陽極では、塩化物イオンが陽極に電子を1個渡し、塩素原子になります。そして2個の塩素原子が結びつき、塩素分子になって出てきます。
銅イオンの色は青色です。電気分解が進むと、銅イオンが減って銅原子になるので、水溶液の青色はだんだん薄くなっていきます。
陰極に付着した銅原子の色は赤かっ色です。
塩素は水に溶けやすい気体なので、発生した塩素分子は水に溶けてしまいます。
塩酸(塩化水素の水溶液)の電気分解

陽イオンである水素イオンは陰極に引かれます。
陰イオンである塩化物イオンは陽極に引かれます。
陰極では、水素イオンが電子を受け取って水素原子になり、2個の水素原子が結びついて水素分子になります。
陽極では、塩化物イオンが陽極に電子を1個渡し、塩素原子になります。そして2個の塩素原子が結びつき、塩素分子になって出てきます。
水素は水に溶けにくい気体なので水素分子は泡となって陰極に付着しますが、塩素はほとんどが水に溶けてしまいます。
水の電気分解
純粋な水は電流が流れにくいので、水を電気分解するときは電気が流れやすくなるように水酸化ナトリウムや硫酸を加えます。このとき、水が電気分解されて、水酸化ナトリウムや硫酸が電気分解されることはありません。
水溶液中にアルミニウム以上にイオンになりやすい金属の陽イオンがあるときは、水の分子が陰極から電子を受け取り、水素と水酸化物イオンが発生します(水酸化ナトリウムの場合)。
水溶液中に、銅も溶かす酸の陰イオンだけがあるとき、水の分子が陽極に電子を渡し、酸素と水素イオンが発生します(硫酸の場合)。
酸とアルカリ
酸・・・電解質で、電離して水素イオンが発生する物質。
炭酸以外は水素の化合物です(炭酸は二酸化炭素と水が反応して水素イオンを生じる)。
おもな酸の電離の式
塩化水素が水素イオンと塩化物イオンに電離
硫酸が水素イオンと硫酸イオンに電離
アルカリ・・・電解質で、電離して水酸化物イオンが発生する物質。
水酸化アンモニウム(アンモニア水)以外はOH(水酸基と呼ばれる)を含む化合物です(水酸化アンモニウムはアンモニアと水が反応して水酸化物イオンを生じる)。
おもなアルカリの電離の式
水酸化ナトリウムがナトリウムイオンと水酸化物イオンに電離
水酸化バリウムがバリウムイオンと水酸化物イオンに電離
中和
酸とアルカリを混ぜるとき、必ず、酸に含まれる水素イオンとアルカリに含まれる水酸化物イオンが結びついて水ができます。
中和・・・酸の水素イオンとアルカリの水酸化物イオンが結びついて水ができる反応
塩酸と水酸化ナトリウムを反応させたとき

酸の水素イオンとアルカリの水酸化物イオンが結びつく
水ができる
このとき、塩化ナトリウムは電解質なので、ナトリウムイオンと塩化物イオンは水に溶けたままの状態で残ります。
硫酸と水酸化バリウムを反応させたとき

酸の水素イオンとアルカリの水酸化物イオンが結びつく
硫酸の硫酸イオンと水酸化バリウムのバリウムイオンも結びつく
水と硫酸バリウムができる
この反応では、塩(えん:中和で、水以外にできるものを塩という)である硫酸バリウムは非電解質なのでイオンでは存在せず、硫酸バリウムの固体となって水溶液の底に白い沈殿となって現れます。
いずれにしても、酸とアルカリを混ぜ合わせると必ず水素イオンと水酸化物イオンが結びついて水ができるので、中和の式をいえと問われたら下のように答えます。
中和を表わす式

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原子の構造
すべての原子は、質量の大きい原子核とそのまわりを回っている電子から構成されています。原子核は、+の電気を帯びた陽子と電気を帯びていない中性子からできています。

陽子と中性子の個数と質量は等しく、陽子と電子の個数も等しいことがわかっています。
原子核に含まれる陽子(+の電気を帯びている)の個数と、そのまわりを回っている電子(-の電気を帯びている)の個数は等しいので、原子全体はプラスでもマイナスでもない、電気を帯びていない状態にあります。
イオン
原子核のまわりを回っている電子の軌道はいくつかの層をに分かれます。一番近い層には2個の電子、その外側の層には8個の電子、さらにその外側には8個の電子と、層に含まれる電子の数も決まっています。

陽子の個数は11個、原子核全体で帯びているプラスの電気は11です。
電子の個数も11個で、帯びているマイナスの電気も11です。
この状態では、原子全体はプラスでもマイナスでもありません。
ところが、原子は、一番外側の層の電子の数が8個のときに安定するという性質があります。
ナトリウムの場合、内側から2番目の層の電子の個数が8個、その外側の層の電子の個数は1個ですから、外側の電子1個を手放すと、一番外側の層の電子の個数が8個となって安定します。
一番外側の層の電子を手放してしまうと、原子核のプラスの数は11、電子のマイナスの数は10となり、全体では1のプラスになってしまいます。
この、電気を帯びてしまった状態の原子をイオン、+の電気を帯びたので陽イオン、+イオンといいます。

陽子の数、原子核の帯びているプラスの電気は17です。
電子の個数も17個、帯びているマイナスは17です。
原子全体はプラスでマイナスでもありません。
塩素原子の一番外側の層の電子の個数は7個です。
あと1個、電子を他からもらうと、電子の個数が8個になって安定します。
他の原子が手放した電子を1個受け取ると、外側の電子の数が8個になって安定しますが、原子核のプラスの電気の量は17個、電子のマイナスの量は18個になり、全体では1のマイナスを帯びてしまいます。
全体で電気を帯びてしまったのでイオン、負の電気を帯びたので陰イオン、-イオンといいます。
陽イオン(+イオン)・・・電子を手放してプラスの電気を帯びたイオン。
水素と金属のイオンが多い。

水素イオンは1個の電子を手放し+1の電気を帯び、銅イオンは2個の電子を手放し+2の電気を帯びています。
陰イオン(-イオン)・・・電子を受け取ってマイナスの電気を帯びたイオン。
塩化物イオン(塩素の原子がイオンになったもの)や、原子が2個以上結びついて陰イオンになったものが多い。

塩化物イオンは1個電子を受け取り-1の電気を帯び、硫酸イオンは2個電子を受け取り-2の電気を帯びています。
電解質と非電解質
物質が水に溶けるとき、分子のままで水に溶けてしまうものと、陽イオンと陰イオンに分かれて溶けてしまうものの2種類に分かれます。
電離・・・物質が水に溶けるとき、陽イオンと陰イオンに分離すること。
電解質・・・水に溶けて陽イオンと陰イオンに分かれる物質のこと。電離する物質といってもよい。ばらばらになったイオンが電極に引かれるので、水溶液を電流が流れます。
塩化ナトリウム(食塩)、塩化水素(水溶液が塩酸)などの酸、水酸化ナトリウムなどのアルカリ、塩化銅などは電解質です。
非電解質・・・水に溶けるとき電離しないで分子のままで溶ける物質のこと。水に溶けた分子が電気を帯びていないので電極に引かれることはなく、水溶液を電流は流れません。
砂糖やエタノールが非電解質の代表的な例です。
電離の式

塩化水素が水素イオンと塩化物イオンに電離
水酸化ナトリウムがナトリウムイオンと水酸化物イオンに電離
塩化銅が銅イオンと塩化物イオンに電離
電気分解とイオン
水溶液中の電極のうち、電源の+極につながったほうを陽極、電源の-極につながったほうを陰極といいます。
陽極には-の電気を帯びた陰イオンが引き寄せられ、陽極に電子を渡します。電子を渡した陰イオンはイオンでなくなり原子に戻り、陽極に付着します(気体の場合は分子になって陽極に付着します)。
陰極には+の電気を帯びた陽イオンが引き寄せられ、陰極から電子を受け取ります。電子をもらった陽イオンはイオンであることをやめて原子に戻り、陰極に付着します(気体の水素だと分子になって付着します)。
塩化銅水溶液の電気分解

陽イオンである銅イオンは陰極に引かれます。
陰イオンである塩化物イオンは陽極に引かれます。
陰極では、銅イオンが2個の電子を受け取って銅原子になり、陰極に付着します。
陽極では、塩化物イオンが陽極に電子を1個渡し、塩素原子になります。そして2個の塩素原子が結びつき、塩素分子になって出てきます。
銅イオンの色は青色です。電気分解が進むと、銅イオンが減って銅原子になるので、水溶液の青色はだんだん薄くなっていきます。
陰極に付着した銅原子の色は赤かっ色です。
塩素は水に溶けやすい気体なので、発生した塩素分子は水に溶けてしまいます。
塩酸(塩化水素の水溶液)の電気分解

陽イオンである水素イオンは陰極に引かれます。
陰イオンである塩化物イオンは陽極に引かれます。
陰極では、水素イオンが電子を受け取って水素原子になり、2個の水素原子が結びついて水素分子になります。
陽極では、塩化物イオンが陽極に電子を1個渡し、塩素原子になります。そして2個の塩素原子が結びつき、塩素分子になって出てきます。
水素は水に溶けにくい気体なので水素分子は泡となって陰極に付着しますが、塩素はほとんどが水に溶けてしまいます。
水の電気分解
純粋な水は電流が流れにくいので、水を電気分解するときは電気が流れやすくなるように水酸化ナトリウムや硫酸を加えます。このとき、水が電気分解されて、水酸化ナトリウムや硫酸が電気分解されることはありません。
水溶液中にアルミニウム以上にイオンになりやすい金属の陽イオンがあるときは、水の分子が陰極から電子を受け取り、水素と水酸化物イオンが発生します(水酸化ナトリウムの場合)。
水溶液中に、銅も溶かす酸の陰イオンだけがあるとき、水の分子が陽極に電子を渡し、酸素と水素イオンが発生します(硫酸の場合)。
酸とアルカリ
酸・・・電解質で、電離して水素イオンが発生する物質。
炭酸以外は水素の化合物です(炭酸は二酸化炭素と水が反応して水素イオンを生じる)。
おもな酸の電離の式

硫酸が水素イオンと硫酸イオンに電離
アルカリ・・・電解質で、電離して水酸化物イオンが発生する物質。
水酸化アンモニウム(アンモニア水)以外はOH(水酸基と呼ばれる)を含む化合物です(水酸化アンモニウムはアンモニアと水が反応して水酸化物イオンを生じる)。
おもなアルカリの電離の式

水酸化バリウムがバリウムイオンと水酸化物イオンに電離
中和
酸とアルカリを混ぜるとき、必ず、酸に含まれる水素イオンとアルカリに含まれる水酸化物イオンが結びついて水ができます。
中和・・・酸の水素イオンとアルカリの水酸化物イオンが結びついて水ができる反応
塩酸と水酸化ナトリウムを反応させたとき

酸の水素イオンとアルカリの水酸化物イオンが結びつく
水ができる
このとき、塩化ナトリウムは電解質なので、ナトリウムイオンと塩化物イオンは水に溶けたままの状態で残ります。
硫酸と水酸化バリウムを反応させたとき

酸の水素イオンとアルカリの水酸化物イオンが結びつく
硫酸の硫酸イオンと水酸化バリウムのバリウムイオンも結びつく
水と硫酸バリウムができる
この反応では、塩(えん:中和で、水以外にできるものを塩という)である硫酸バリウムは非電解質なのでイオンでは存在せず、硫酸バリウムの固体となって水溶液の底に白い沈殿となって現れます。
いずれにしても、酸とアルカリを混ぜ合わせると必ず水素イオンと水酸化物イオンが結びついて水ができるので、中和の式をいえと問われたら下のように答えます。
中和を表わす式

理科の全目次はこちら
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